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昭和6(1931)年11月のことです。
熊本の帯山陸軍練兵場で、昭和天皇御統監のもと、陸軍の特別大演習が開かれました。
このとき、師団の勇姿をひとめ見ようと10万人もの観衆が詰めかけています。
演習のあと、昭和天皇は、熊本から汽車で鹿児島に出られ、そから御召艦(おめしかん)である「榛名(はるな)」にお乗りになり、横須賀へと向かわれました。
日没と同時に天皇旗をひるがえした榛名は、お供の駆逐艦4隻を従えて、桜島を背に、鹿児島湾を出港しました。
御召艦は、天皇陛下がお乗りになる軍艦です。
陛下が自分たちの船に乗ってくださる。
それはとても名誉なことです。
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当時の乗員たちは、その日のために、艦を磨き上げました。
いよいよ当日、艦に天皇旗がひるがえったとき、それを見上げる水兵たちの気持ちやいかばかりだったでしょう。
その水兵たちが、天皇旗を見上げて感慨にふけっているとき、そこに昭和天皇がお越しになりました。
慌てて不動の姿勢をとり、挙手敬礼をする水兵さんたちに、陛下は、
「君たちのおかげで、艦はどこもかしこもピカピカだね。ありがとう」と親しくお声をかけられました。
水兵さんたちは、びっくりしたそうです。
けれど、このように陛下が兵隊さんたちに親しくお声をかけられるということは、当時、決してめずらしいことではありません。
陛下もご自由に艦内を歩き回られましたし、そこで作業中の水兵さんたちに親しくお声をかけられ、はじめ緊張していた水兵さんたちもすぐに打解けて、艦内には笑いがたえなかったそうです。
国を護るために懸命に働く水兵さんたちと、ひたすら国民の安寧を願われる陛下です。
畏れ多くも、陛下と国民の心はひとつです。
日本的君民という、どこぞの国の上下や支配の関係などとはまったく異なる、日本的姿がそこにあります。
榛名の中で陛下の居室兼食堂に充てられたのは、後甲板の真下の司令長官室でした。
そこは専用の階段をあがると後甲板に出れるところです。
後甲板は、夜は真ん中に電灯がひとつ灯るだけの薄暗いところです。
陛下は、水兵さんたちとのふれあいのあと、その長官室でおひとりでお食事をお召し上がりになられたのだそうです。
普通なら、艦の誰かが夕食にはお相伴するのですが、この日は、たままた夕刻の出発直後であったため、総員多忙だったのです。
このとき、同行していた木下道雄皇室侍従次長は、別室で食事をとっていたのですが、そのとき、ふと気がついたことがありました。
大正14年の夏、まだ陛下が皇太子であられたときのことを思い出したのです。
陛下はこのとき軍艦長門で樺太にご旅行になられたのですが、ある日の夜、樺太の南端にある大泊(おおどまり)港から、真岡方面に船を回航している途中、艦は夜の仮泊のために、海馬島という絶海の孤島のあたりに艦を停泊させようと、島の周りを徐行していました。
そのとき、木下侍従次長らは、殿下(のちの昭和天皇)とともに、あたりの景色を愉しまれていたのですが、そのとき、殿下が、
「この島の人たちの暮らしぶりはどうか?」とご下問になりました。
侍従次長が、
「はい。この島には100人ほどの日本漁民がいて、漁業を営んでおります」と答えますと、殿下は、
「そう。冬はたいへんだろうね」とお応えになりました。
夏の夕暮れ時とはいえ、あたりは風浪の激しいところです。
甲板には強い風が吹き付けていたのですが、そのとき、風浪の先から、なにやら人の声のようなものが聞こえたことに、殿下が気付かれました。
艦の者が確かめると、波の向こうから、手漕ぎの小船に乗った数名の島民たちが、「なにやら手を振り、万歳をし、大声で叫んでいるようです。
そのとき殿下は、
「私の歓迎のために(彼らは)わざわざ船をだしてくれたのだ。たとえ(声が)風にかき消されたとしても、彼らの声は、私の心に届く」とおっしゃられ、陛下は甲板の手すりに進まれると、
「ありがとう!」と声をあげられ、帽子をとって、力一杯振られたそうです。
陛下の御召艦が、海馬島のあたりに仮泊するということは、ニュースで刻々報道されていました。
おそらく、島民たちは総出で、沖まで船を出し、殿下をお迎えしようとしたのでしょう。
けれど、日没後のシケで荒れた海で、長門の艦影を発見できず、そのなかの一艘だけが、彼らだけが、やっと艦を見つけて、すこしでも艦に近づこうと、荒波のなかを一生懸命船を漕いできたのだと思われます。
周囲にいた者たちも、全員、殿下に倣って、帽子をとり、これを振りながら「ありがとう」と声をあげました。
けれど、徐行しているとはいえ、軍艦の速度に、人力の小船が追いつけるわけもなく、一瞬の後には、小船は見えなくなってしまいました。
そのときのことを、木下侍従次長は、鹿児島の艦の中で、ふと思い出したのです。
「もし、おなじようなことが、この鹿児島でも起こったとしたら・・・」
北海の孤島と違い、波の静かな鹿児島湾内のことです。
いつどこから船が来るかもしれない。
もし、あのときと同じように、お見送りの船があったとしたら・・・。
いま陛下はお食事中だし、お付きの人々も、乗員も業務の真っ最中で、誰もそれに気付かないではないか!?
木下侍従次長は、そう気付くと、矢もたてもたまらず、食事を早々に終わらせると、後ろ甲板に飛び出して行きました。
そこで、木下侍従次長は、生涯忘れられない光景を見ました。
侍従次長が甲板に駆け上がると、当日は月もなく、星明かりもない真っ暗闇でした。
南国鹿児島とはいえ、当時の11月中旬といえば、夜はたいそう冷え冷えとします。
あまりの寒さに、外套をとりに船室に戻ろうとしたとき、侍従次長は見たのです。
それは、真っ暗な後甲板で、たったひとりで直立不動の姿勢をとり、挙手敬礼をしたまま、じっと動かずにいる人影でした。
(そうか。もしかして鹿児島の人たちが見送りに来るかもしれないと気付いたのは、私だけではなかったんだ。けれど、あの人影は誰だろう)
そう思って、「やあ、ご苦労さん」と声をかけようとしたとき、木下侍従次長は、そのたったひとりで敬礼をしている人影が、陛下であることに気付きました。
(陛下をお見送りしようと、小船が来ているのだろうか)
慌てて木下侍従次長は海面を見渡したのだそうです。
けれど、小船はどこにも見当たりません。
薩摩半島の稜線が、ぼんやりと見えるだけです。
双眼鏡をのぞきこんだ木下侍従次長は、そのときふと気がつきました。
鹿児島の方向に、赤い紐のようなものが、海岸線に沿って水平に延々と果てしなく続いているのです。
それだけじゃない。
赤い紐のように見える上に、橙色の点々もあります。
それは海岸線から見て、おそらく山中の小高いところに点在しています。
「ああっ。わかった!」
赤い紐の正体は、この暗闇の中で、軍艦の姿は見えないまでも陛下をお見送りしようと、こぞって海岸に立ち並んでいる人々の提灯(ちょうちん)や、松明(たいまつ)の灯(あかり)だったのです。
そして、その上に見える橙色は、提灯だけでは足りずに、山に登って焚いた篝火だったのです。
「どうかご無事でお帰り下さい」
「またおいでください」
そんな声が、まるで聞こえて来るかのようです。
すでに距離は遠く、肉眼ではその灯りは見えません。
見えないけれど、陛下は海馬島のときのことを覚えておいでになり、たったひとり、後甲板に出て、寒い中外套もはおらず、誰かがお見送りされいたら申し訳ないからと、お食事もそっちのけで、ただおひとり、真っ暗闇の中で、沿岸の人たちに不動の姿勢で敬礼をなさっておいでだったのです。
「ああ、これこそ日本の本当の姿だ。なんとかして、見送りに来ているあの人たちに、陛下のお気持ちをお伝えせねば」
木下侍従次長は、急いで艦橋に駆け上がると、艦長にそのことを伝えました。
大隅半島の沿岸には、たくさんの人たちが出ていました。
けれど、真っ暗闇の中です。
灯りは陛下の艦には届かないかもしれない。
けれど、灯りが見える見えないは、どうでんよか。見えちょらんでも、心は通じっちょど。
そんな思いで沖合を眺める人々の前に、突然、ボッ!という大きな音が聞こえました。
榛名以下5艘の艦の探照灯が、一斉に点灯されたのです。
沿岸で見送る人々に、陛下がご挨拶くだされた。
そのお気持ちがはっきり伝わったのでしょう。
岸に沿って長い紐のようになっている灯りが、遥か遠目にも、揺れているのが見て取れたそうです。
それは、民の真心が陛下の御心に届き、陛下の真心が無事に民に届いた瞬間でした。
たとえ遠く離れていても、たとえそれが闇の中であろうと、必ず通じ合う心、それが君と民の「結(ゆ)い」の心です。
※このお話は、特定非営利法人ふるさと日本プロジェクト発行「マンガ/昭和天皇にあいたい1」をもとに編集させていただきました。
内容は実話です。
このシリーズは現在11冊出ていますが、とても読みやすく、また感動的に描かれていて、おススメです。
http://biken-guide.co.jp/doc/furusato.php
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