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ひとりひとりの人間には、小さなことしかできないかもしれないけれど、みんなが力を合わせることによって、そして最高の働きをすることによって、人は、大きな働きをすることができる。
そして、みんなで大輪の紫陽花を咲かせる。
それが日本であり、私達は、そんな日本に生まれた日本人です。

20210702 アジサイ
画像出所=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%B5%E3%82%A4#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hydrangea_of_Shimoda_%E4%B8%8B%E7%94%B0%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%98%E3%81%95%E3%81%84_(2630826953).jpg
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歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。
梅雨の季節といえばアジサイです。
アジサイの花は、梅雨の間に七色に色を変えます。
後に季節の風物詩になりますが、万葉の時代には、あちこちで咲いていたにも関わらず、アジサイを詠んだ歌は二首しかありません。
そのひとつをご紹介してみたいと思います。
それが次の歌です。
が、そんなアジサイを詠んだ歌が万葉集にあります。
大伴家持の歌です。
万葉集4巻773
こととはぬ (事不問
きもあじさいの (木尚味狭藍
もろとらの (諸苐等之
ねりのむらとに (練乃村戸二
あざむききたる (所詐来
一般の訓読は、
「事(こと)とはぬ、木(き)すら紫陽花(あじさゐ)諸苐(もろと)らし、
 練(ねり)の村戸(むらと)に詐(あざむ)かえけり」

というもので、
訳は、
「物事を問わない木や、色が七色に変わるアジサイの花のように、
 諸々(もろもろ)の弟たちが練り上げた策略に
 騙(だま)されてしまいましたよ」

とされています。
これですと、あたかもアジサイの花が七色に花色を変えることから、
「うまいことを言われて、すっかり騙されてしまった」
と詠んでいるかのようなイメージの歌になります。
けれど、この歌は、もともと「恋文」として詠まれた歌です。
後に従三位中納言に栄達する大伴家持(おほとものやかもち)がまだ若い頃、後に妻に迎える大伴坂上大嬢(おほとものさかのうえのおほひめ)に贈った5首の歌のなかのひとつの歌なのです。
果たして普通に考えて、恋文に「私は詐欺師たちに騙されました」と詠むでしょうか。
この歌をよく見ると、その「詐欺師たち」を意味している箇所を、大伴家持は「諸苐等」と書いていることに気付かされます。
これが「諸弟等(もろとら)」、つまり「もろもろの弟ら=部下たち」を意味しているというのなら、そういう解釈もあるかもしれまえんが、使っている字は、
「弟」ではなく、
竹カンムリの「苐」です。
この「苐」という字は、弟(おとうと)を意味する字ではなくて、草木の「新芽」を意味する漢字です。
そうであれば「諸苐等」は、「もろもろの新芽たちは」といった意味になります。
また「練乃村戸二( ねりのむらとに)」の「練」という字は、「良いものを選び出す(引き出す)」という意味を持つ漢字です。
そうであれば「練乃村戸二」は、「村の戸から、最高に良いものを選びました」といった意味になります。
問題は最後の句の「所詐来(あざむききたる )」で、「詐」という字は、作った言葉を意味する漢字で、そこから「言葉を作って来た→言葉をつくした」という意味になります。
こうして歌に使われている漢字をもとに、歌を再解釈すると、この歌の意味は次のようになります。
古代において、我が皇軍の最高司令官であった大伴家持は、
最愛の人を妻に迎えようとしたとき、
「様々な種類の木々や、
 七色に花色を変える
 アジサイの新芽。
 その中から私は
 最高に良い女(ひと)を選びました。
 だからいま、
 こうして言葉をつくして
 歌をお送りします」

と想いを歌に託しました。
そして見事、意中の女性を射止め、妻に迎えました。

このように、この歌は、実に見事な恋歌と読むことができます。
歌の解釈は、様々あって良いと思います。
けれど、詞書(ことばがき)に、意中の女性にプロポーズのために贈った歌なのだと、ちゃんと書いてあるのですから、それはそのようにちゃんと解釈すべきと思います。あくまでこれは私の意見です。
万葉集の歌は、すべて漢字で記されています。
それらの歌は、漢字を単に万葉仮名として用いているものもあれば、大和言葉に漢字の持つ意味を重ねることで、重層的に複雑な思いを表現しようとした文化の香り高い文字の使い方をしている歌もあります。
そしてこした官製和歌集を編纂することで、わが国は、わが国を殺し合いによる権力闘争の国ではなく、教育と文化の国にしていこう、という明確な強い意志のもとに万葉集を世に出しています。
なぜそのようなことを言うのかって?
当然です。
書かれたものには、すべて書いた目的があるからです。
さて、紫陽花(あじさい)は、花の色が梅雨の間に七色に変わります。
様々な色合いを見せる。
とりわけ花の新芽は、上の写真にもあるように、さまざまな色合いを私達にみせてくれます。
古代の大伴氏といえば、天皇側近の豪族の中の大豪族です。
その跡取り息子であった若き日の大伴家持は、こうして常に最高を求める人でもあったということです。
そしてその大伴家持が、わが国の古代における軍の最高司令長官になることにより、我が皇軍は、当時の世界にあって、世界最高の装備と、世界最高の教練を受けた、世界最強の防人(さきもり)となり、国の護りにあたりました。
いろいろある。
それが良いことなのです。
現代日本においても、極左から極右まで、様々な思想が許容される。
だから日本は素敵なのだと、思います。
これが、ひとつの思想、ひとつの考え方しか認められないようなことでは、全体主義です。ファシズムです。
それでは居心地の悪い国になってしまう。
様々な考え方の人がいて、そういう人たちが、様々に花を咲かせようと努力している。
しかし、それらは、すべて、紫陽花の新芽だということです。
咲いてみれば、ひとつの枝から出た、同じ紫陽花の花です。
だから、ひとつになるときは、本気になってひとつになる。
なぜなら私達は、みんなでひとつだからです。
これは体の細胞と同じです。
ひとつひとつの細胞は、ほんのちょっとずつの役割しか果たすことができないけれど、でも、みんなでまとまることで、皮膚になったり、内臓になったり、さざまな大きな働きをすることができる。
細胞のひとつにだって、もしかしたら、様々な考え方をもっているかもしれない。
けれど、つねに、みんなで一緒になって、細胞は自分の役割を遂げて、一生を終わっていきます。
ひとりひとりの人間には、小さなことしかできないかもしれないけれど、みんなが力を合わせることによって、そして最高の働きをすることによって、人は、大きな働きをすることができる。
そして、みんなで大輪の紫陽花を咲かせる。
それが日本であり、私達は、そんな日本に生まれた日本人です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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