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困ったときには原点に帰る。
その原点というのは、笑顔で活発で、明るくて元気いっぱいの姿です。
またそこから立ち上がっていこうよ。
また新たに出発して行こうよ。
いつだって、何度だって、やり直すのさ、
そう言って白い歯を見せて笑っている
そういった、底抜けの陽気さが、日本人の原点です。

可美葦牙彦舅尊 (うましあしかびひこじのみこと)を御祭神とする浮島神社《愛媛県東温市》
20210510 浮島神社
画像出所=http://ehime-jinjacho.jp/jinja/?p=4816
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画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


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小名木善行です。
我が国の神話に登場する創生の神々の中に、ウマシアシカビヒコヂノカミという神様がおいでになります。
お名前は、
古事記では、 宇摩志阿斯訶備比古遅神、
日本書紀では 可美葦牙彦舅尊
と表記されます。(読みはどちらも同じです)
古事記では、はじめに天御中主神、高御産巣日神、神産巣日神がお生まれになられたあと、
「次に国(くに)稚(わか)くして
 浮かべる脂(あぶら)のごとく、
 クラゲのようにただよえるとき、
 葦牙(あしかび)のごとく
 萌えあがるものに成る神の名は
 宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)。
 この神の名は音(こえ)を以(もち)いる」
と書かれています。
(原文:
 次、國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時(流字以上十字以音)
 如葦牙、因萌騰之物而成神名、宇摩志阿斯訶備比古遲神(此神名以音)
ここでは宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)の名は、「音(こえ)を以(もち)いる」と書かれていますから、用いられている漢字には何の意味もなく、単に神様のお名前が「ウマシアシカビヒコヂノカミ」ですよ、と述べていることになります。
意味は
 うまし  美しくて立派
 あしかび 葦(あし)の新芽
 ひこぢ  立派な男性
そこから「ウマシアシカビヒコヂの神」の名は、
「成長の早い葦(あし)の新芽のように、
 美しくて立派な男性の神様」という意味であるとわかります。
ところが古事記の文章は、このすぐ後に、
「次に天之常立神(あめのとこたちのかみ)
 この二柱の神もまた
 独神(ひとりがみ)と成(な)りまして
 身に隠しましきなり。
《原文:
 次天之常立神(訓常云登許、訓立云多知)。
 此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也》
と書いています。
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「独神(ひとりがみ)」というのは、性別のない神様とも言われますが、正確には、夫婦の組としてでなく単独で成った神のことを表します。
では、男女一対の神を何というかというと、
「双神(ならびかみ)」、もしくは偶神(たぐひかみ)などと呼びます。
つまり「ウマシアシカビヒコヂの神」は、美しくて立派な男性の神様であって、独身の神様であった・・・というわけです。
次の天之常立神(あめのとこたちのかみ)も、ご夫婦で天に常に立たれた神様はなく、おひとりで天に立たれたのだ、というわけです。
一方、日本書紀では、本文に「ウマシアシカビヒコヂの神」は登場しません。
混沌としたなかに、最初の神様であられる国常立尊(くにのとこたちのみこと)が生られたときの表現として、次のように述べられています。
このときあめと つちのなか    于時天地之中
あしかびのごと なりますは    生一物状如葦牙
すなはちかみと なりたまひては  便化為神
くにのとこたち みこととまをす  号国常立尊
ここでいう葦牙(あしかび)は、意味としては「葦(あし)の新芽」のことであり、若々しく、エネルギーに満ち溢れた存在として国常立尊が生られたと記しているわけです。
つまり「ウマシアシカビヒコヂの神」は、状態として「葦の新芽である葦牙(あしかび)のようなエネルギーに満ち溢れた芽」として描かれているだけで、それ自体を独立した神としては描いていません。
ただし日本書紀は、「一書曰(あるふみにいわく)」として、ここに別伝を6書伝え、このうちの3書で「ウマシアシカビヒコヂの神」を次のように紹介しています。
1 あるふみに いはくには     一書曰
  いにしへの くにわかくして   古國稚
  ちもわかきとき なほたとへれば 地稚之時譬猶
  うかべるあぶら うごきただよふ 譬猶浮膏而漂蕩
  このときくにの なかにうまれる 于時國中生物
  あしかびのごと ぬきいでて   狀如葦牙之抽出也
  よりてうまれて かみとなります 因此有化生之神
  うましあしかび ひこぢのかみ  號可美葦牙彥舅尊
  つぎにはくにの とこたちのかみ 次國常立尊
2 あるふみに いはくには     一書曰
  あめつちの まじるとき     天地混成之時
  はじめにかみの ひとありき   始有神人焉
  うましあしかび ひこじとまをす 號可美葦牙彥舅尊
  つぎにはくにの そこたちのかみ 次國底立尊
3 あるふみに いはくには     一書曰
  あめつちの はじめにるもの   天地初判有物
  わかきあしかび そらになる   若葦牙生於空中
  よりてはかみと なりまして   因此化神
  あめのとこたち みこととまをす 號天常立尊
  つぎにはうまし あしかびひこじ 次可美葦牙彥舅尊
  またあるものは わかきあぶらの 又有物若浮膏
  そらにうかびて なるかみは   生於空中因此化神
  くにのとこたつ みこととまをす 號國常立尊
いずれもはじめに混沌があり、その混沌の中に、若い葦の芽のような活き活きとした萌芽が生まれ、そこから偉大な神がお生まれになったといった表現になります。
このことは具体的に「ウマシアシカビヒコヂの神」という御神名を記述していない他の3書も同じで、いずれも葦牙、あるいは
ここに古代の人々の、「ウマシアシカビヒコヂの神」への思いが伺えます。
それは、
我々の出発点は、単に混沌とした天地というのではなく、そこに現れた、溌溂(はつらつ)として生気のあふれた、元気いっぱいの若さにある、ということです。
最初の神様が、けっしてしかめっ面であったり、威張っていたり、あるいは気取っていたり、おすまししていたのではなく、溌溂とした若さや、活発さにあるということは、我々の祖先は、神々を、明るく、元気いっぱいで、生命力にあふれた、そして愛情にあふれた存在と考えていた、ということです。
このことを象徴しているのが、「ウマシアシカビヒコヂの神」であり、漢字で書けば「可美葦牙彥舅尊」である、ということなのです。
これは、とってもありがたいことだと思います。
人は誰しも、失敗したり、へこんだり、落ち込んだり、あるいは卑屈に歪んだりもするものです。
けれど、万物のはじまりのときに、最初にあらわれた神様は、とにもかくにも明るくて元気いっぱいの中から生まれたのだ、というのです。
だったら、困ったときには原点に帰る。
その原点というのは、笑顔で活発で、明るくて元気いっぱいの姿です。
またそこから立ち上がっていこうよ。
また新たに出発して行こうよ。
いつだって、何度だって、やり直すのさ、
そう言って白い歯を見せて笑っている
そういった、底抜けの陽気さが、日本人の原点です。
お読みいただき、ありがとうございました。
日本をかっこよく!! むすび大学。

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