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20191006 ねずラジ
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20191023 松
画像出所=http://apoco.xsrv.jp/ikiru_hint/archives/3025/
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

昨日に続き、尋常小学読本四から、「松の木の話」をご紹介したいと思います。
これもまた、たいへん示唆に富んだお話です。
原文は漢字とカタカナ文ですので、いつものようにねず式で現代語訳します。
***
尋常小学読本四
第12 松の話

松の木は、青い針のような葉を持っています。
その葉は、たいてい2つづつ一緒になって付いています。
松の葉は、他の木の葉のように、色が変わったり、落ちたりするようなことはありません。
ですから人が「松はめでたい木だ」と言って、門松(かどまつ)などにします。
あるとき、林の中に小さな松の木がありました。
たいそう自分の葉を嫌って、いつも
「金の葉を持ってみたいものだ」
と言っていました。

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20190317 MARTH


ある朝、目を覚まして見ますと、葉がすっかり立派な金の葉に変わっていました。
松の木はたいそうよろこびました。
ところがまもなく人が来ました。
そしてその金の葉を、ひとつも残さず、取っていってしまいました。
松の木はたいそう悲しがりました。
そしてそれからは、
「カラスの葉を持ってみたいものだ」
と言っていました。
ある朝、松の木が目を覚ますと、どの枝にもガラスの葉が付いていました。
それは陽が映えて、たいそうきれいでした。
松の木は、またたいそう喜びました。
ところが間もなく、風が強く吹いてきました。
そしてそのガラスの葉を、ひとつ残らず吹き落として壊(こわ)してしまいました。
松の木は、またたいそう悲しがりました。
そしてそれからは、
「金の葉や、ガラスの葉には、
 もう懲(こ)りてしまった。
 草のような葉を持ってみたいものだ」
と言っていました。
ある朝、目を覚ましてみますと、どの枝にも、草のような葉が付いていました。
松の木は、たいそう喜びました。
ところが間もなく、牛が来ました。
そしてその葉をすっかり食べてしまいました。
松の木は、声をたてて泣き出しました。
そしてそれからは、
「金の葉や、ガラスの葉や
 草のような葉には
 もう懲りてしまった。
 やっぱり元の、
 青い針のような葉が
 一番よい。
 どうかして早く元の通りになりたいものだ」
と言っていました。
ある朝、目を覚ましてみますと、すっかり元の通りになっていました。
松の木は、たいそう喜びました。
そしてそれからは、もう
「他の葉を持ってみたい」
と言ったことはありませんでした。

****
みなさまは、何をお感じになりましたか?
松は、どんなに土の栄養のとぼしい、岩場や断崖絶壁、あるいは砂地でも風雪に耐えて雄々しく茂ることから、古来、源氏の象徴としされてきた木です。
それこそが、どんな難事にあっても、不退転の武士の心だということで、武士の象徴ともされ、ですからお城といえば、庭に松の木が定番ともなりました。
またお能は源氏の棟梁の足利氏が引き立てた芸能ですが、そうした次第から、全国どこの能楽堂でも、壁には松の木が描かれています。
その松の木が、金やガラスや草をうらやましがって、実際に枝をそのようにしたら、結果は残念なことになったというのが、この物語です。
けれど考えてみれば、戦後の日本は、たとえば住宅行政において、欧米式の核家族住宅をよろこび、そのような家を手に入れることが、サラリーマンの夢とされ、気がつけば、国土から緑が失われ、災害に弱い都市をつくってしまいました。
住宅用の木材も、国産材を使わず、舶来品ばかりをありがたがって、法制度もそのように変えたのですが、外材は、たとえば年間の平均湿度が20%に満たないような土地で生えた木材を用いるわけです。
日本は高温多湿の国ですから、そのような木材を住宅用に使えば、木材は大喜びで空気中の湿気を吸う。
結果、壁紙の裏側はカビだらけといった事態を呼んだりしています。
個人の生活においても、他人の生活をうらやんだり、手に入らないとわかれば悪口を言ったりと、これまた読本の松の木のように、ないものねだりをしては、結果、民度を下げています。
分をわきまえて生きる。
自分の分の中で、雄々しく、しっかりと人生をすごしていく。
そうしたことのたいせつさを、戦前は、子供たちにしっかりと教えていたわけですね。
昭和天皇が終戦の翌年に詠まれた御製です。
 降り積もる
 深雪に耐えて
 色変えぬ
 松そ雄々しき
 人もかくあれ

大切な「お示し」だと思います。
※この記事は2019年10月の記事の再掲です。
お読みいただき、ありがとうございました。

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