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20160102 獅子舞

お正月といえば、獅子舞ですが、獅子というのは、そもそも元をたどせば、百獣の王のライオンのことです。
ところがこのライオンを、何故か日本では、総金歯にしています。
百獣の王ライオンを総金歯にしておめでたいと喜んでいるのは、おそらく世界広しといえども日本くらいなものです。
では、なぜ獅子舞の獅子は金歯なのでしょうか。
実はこれには理由があります。
人類が誕生してから、現在に至るまでに世界で算出した金(Gold)の量は、オリンピックプールに換算すると約三杯分です。
このうちまるまる一杯分が、実は、日本で産出した金です。
だからこそマルコポーロは、日本を指して「黄金の国ジパング」と呼んでいます。
日本は、文字通り、まさに「黄金の国」そのものだったのです。
おかげで江戸時代の日本では、庶民が財布に一万円札の代わりに黄金でできた小判を入れていました。
お伊勢参りや金毘羅詣のような一般庶民の旅でも、旅に出るときは、肌着の衿(えり)に、小判一両を縫いこんでおくのが慣習です。
旅の途中で万一倒れたときに、近隣の人に面倒をみてもらう。
そのために、襟に小判を縫い付けました。


江戸期のお伊勢参りや金毘羅詣は、庶民がごく一般に行っていたものです。
庶民というのは、お江戸の町人だけではありません。
むしろ日本の人口の9割近くが農民だったわけで、その農民たちが、お伊勢参りや金毘羅詣をしていたわけです。
いまの日本の歴史学会では、江戸時代の農民は貧乏だったとする貧農史観が主流ですけれど、ではお伊勢参りや金毘羅詣をどのように説明するのか、いちどご高説を伺ってみたいものです。
そもそも、少し考えたら誰でもわかることですが、そこらを歩いたり電車に乗っている人みんなの財布の中に、いまは紙でできたお札が入っていますが、江戸時代には黄金の小判がはいっていたわけです。
それが日本全体になったら、どれだけの金の流通量だったのか。
想像するだけで、黄金の国ジパングの凄味がわかろうというものです。
余計なことを書くと、日本には金がたくさんあったことで、江戸の昔から歯の治療といえば金歯が主流です。
ですから私達のおじいちゃんの世代くらいまでは、ニヤリと笑うと、総金歯があたりまえでした。
ちなみにこうした入れ歯などの歯の治療は、歯医者さんの仕事ではなくて、「入れ歯師」という専業の職人さんの仕事でした。
下にあるのは、18世紀頃の入れ歯師が仕事をしている様子ですが、なんだか痛そうです。

入歯師(1800年頃)
入歯師

人類が虫歯の治療に差し歯をしたのは、紀元前600年頃には、その事例があります。
入歯も、江戸時代には、安価な木製から、高級金歯まで、すでに各種出回っていました。
まさに日本は、掛け値なし、ほんものの「黄金の国ジパング」だったわけです。
そしてものを食べるとき、木や銀よりも、金の入れ歯の方が美味しいし、金は硬さが調度良いので、よく歯になじむ。
だから入れ歯や虫歯の治療といえば、まさに金が主流だったのです。
要するに、日本はそれくらい金が豊富だったということです。
ところが、そんな黄金の国に、嘉永6(1853)年、米国から黒船がやってきました。
南北戦争の8年前です。
鎖国をしていた日本は、とりあえずペリーを上手に追い払い、まる一年、問題を先送りにしました。
もともと米国の日本開国要求の目的は、ひとつには、捕鯨のための立寄港の確保です。
そしてもうひとつが、英国にならぶ繊維製品の販売市場の確保です。
ところがペリーが日本にやってきて驚いたのは、日本人は綿だけでなく、絹も自国で生産している。
しかも紡がれる織物は、まさに工芸品で極めて品質が良い。
これでは米国は商売になりません。
開港要求だけなら、強引に大砲をぶっ放して要求を通せば良いのです。
問題は繊維製品の市場確保で、それをするには、ただ大砲をぶっ放せば良いということにはなりません。
安定的な市場確保のためには、日本とのちゃんとした国交が必要になるのです。
ところがその市場を確保するにも、日本製品の方が品質が良いわけです。
さて困ったと思っているところに、米本国からタウンゼント・ハリスがやってきました。
ハリスは、リンカーンの子分です。
タウンゼント・ハリス
タウンゼント・ハリス

彼は日本の国内事情を調べました。
そしてわかったことは、日本では金(きん=gold)がめちゃくちゃ安い。
当時、世界の相場は、メキシコ銀貨四枚で、金貨一枚と交換です。
ところが、日本では、メキシコ銀貨一枚が、慶長小判一枚と等価です。
つまりメキシコ銀貨一枚を日本に持って行くと、慶長小判一枚と交換してもらえる。
その慶長小判一枚を香港に持ち込むと、メキシコ銀貨四枚と交換してくれるのです。
香港と、日本を、一回往復するだけで、手持ちのお金が4倍に増えるのです。
これを知ったハリスは大喜びしました。
そこで、彼が何をしたというと日本との間で、日米和親条約を取り交わしたあとに、和親条約の細則、つまり「下田条約」を交わします。
その条約でハリスは金と銀の両替相場を固定制にしてしまったのです。
この結果ハリスは、香港と日本を往復するだけで、巨万の富を手にしました。
どのくらい儲けたかというと、なんと京(ケイ)の位まで儲かった。
京(ケイ)というのは、一兆円の一万倍です。
当時、小判入手を目的とするメキシコ銀貨の一分銀への両替要求は、一日になんと1万6千枚にも上ったそうです。一日です。
おかげで、日本の小判、つまり金(Gold)がものすごい勢いで国外に流出してしまいました。
なんと巷から小判が消えてなくなってしまったのです。
いまの世の中から、こつ然と一万円札がなくなったという姿を想像してみてください。
銀行に行ってお金を降ろそうとすると、1万円札がないので、全部100円玉でいいですか?と窓口の女性に聞かれる。
普通は、誰だって驚くと思います。
これが幕末に起きた通貨の混乱です。
頭にきた庶民は、「ええじゃないか」と、もうヤケクソになって踊り狂うしかなかった。
ところがそこまできてもハリスは強欲です。
金が足らなくて小判ができないなら、小判の中の金の含有量を減らしてでも小判を発行せよと、ものすごい剣幕で幕府に迫ったのです。
圧力に屈した幕府は、見た目が同じで含有金量が慶長小判の約八分の一しかない小判を鋳造しました。
これが万延小判です。
万延元(1860)年の出来事です。
ちょうど南北戦争が起きる一年前のことです。
ハリスは、リンカーンの子分だと書きました。
そのハリスは米国政府の人間です。
ですからハリスは、もちろん個人としてもそれなりに儲けたろうけれど、儲けたカネは、基本、すべて米国政府の収入となり、当時の大統領のリンカーンの手元に置かれました。
米国は、こうして世界の富の3分の1の金(Gold)を手に入れたのです。
そしてその金で、200万人の北軍を編成し、最新式兵装を整え、南北戦争を戦い、さらに南軍の借金を立て替え払いし、そしてアラスカまで現金で購入しています。
もうひとついうと、南北戦争では、大量の銃器や大砲が使われました。
けれど、戦争が終われば、それらは無用の長物です。
南北戦争は1865年に終わるけれど、これは日本でいったら慶應元年です。
で、米国がどうしたかというと、この南北戦争の中古品の銃器、弾薬、大砲を、日本に売りつけました。
この結果起きたのが、慶應4年にはじまった戊辰戦争です。
ただし、このとき米国は、自分で直接、官軍か幕軍のどちらかに一方に武器を売るということをしませんでした。
米国は、フランスと英国に、その中古の銃器を降ろし、フランスと英国がそれぞれ薩長、幕府側について、両方に武器を売りました。
つまり、官軍も幕軍も、同じ出所の武器をつかったわけです。
どちらの武器も、南北戦争の中古品です。
日本からみると、アメリカに金貨をだまし取られ、国内の金貨が空っぽの状態で、青息吐息でさらにアメリカから中古武器を買い、国内で大規模な殺し合いの戊辰戦争をしたことになります。
そもそも戊辰戦争は起こす必要のない内戦です。
なぜなら幕府は既に大政を奉還しているのです。
大政奉還したということは、すでに政権交替した、ということです。
敢えて内戦までする必要も理由などなかったのです。
加えて当時の幕府は、金の流出という大失態をしでかし、徳川政権への不信感が増したところに、小判の改鋳を行って国内経済を大混乱に陥れていました。
つまり大政奉還するまでもなく、すでに幕府の権威は完全に地に落ち、徳川政権は完全に政権担当に必要な社会的信頼を失っていたのです。
つまり、そもそも戊辰戦争は必要のない戦争です。
ところが米国にそそのかされたフランスと英国が、それぞれ幕府側、薩長側に付いて戦争をあおりました。
米国から武器を既に仕入れているフランスと英国は、とにかく日本人に南北戦争の中古品の武器を売らなくちゃいけない。
売れば大儲けできるのです。
売り損なえば、破産です。
その手のひらに、薩長も、幕府も乗ってしまったわけです。
おかげで、古代から日本では、戦いは武士たちの専売特許で、百姓町人たちには火の粉がかからないというのが、我が国の歴史であったにもかかわらず、なんと戊辰戦争では、その百姓町人が武器を手にして戦うという、我が国の歴史に類例のない前代未聞の出来事が起こりました。
これが戊辰戦争です。
この戦闘でどれだけ多くの百姓町人が犠牲になったか。
戊辰戦争で失われた命は、合計で8420名(新政府軍3550名、幕軍4690名)にのぼります。
きわめて残念なことと言わざるを得ません。
もっとも、欲と言うのは恐ろしいものです。
日本から金を入手した米国は、その金によって南北戦争という内乱を起こし、なんと米国内だけで南北合わせて120万人の尊い命を犠牲にしています。
それだけの尊い米国人の命を奪った大統領のリンカーンは、私から見たら史上最悪のサタンのような人物ですが、いまではそのリンカーンが奴隷解放の英雄的大統領とされています。
まさに、世界は「腹黒い」のです。
日本は、いろいろ反省しろとか諸外国からやかましいことを言われています。
しかし、本当に反省し、学ばなければならないことは、実はこういうことなのではないかと思います。
お正月の間、獅子舞の獅子の金歯は、あちこちで見かけます。
金歯を見たら、こんなお話を周囲の方にされてみてはいかがでしょうか。
※この記事は拙著『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』第一巻に所蔵したお話を、すこし切り口を変えて述べたものです。
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