■ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!第二巻「和」と「結い」の心と対等意識
2014/04/12発売 ISBN: 978-4-434-18995-1 Cコード:C0021 本体価格:1350円+税 判型:四六 著者:小名木善行 出版社:彩雲出版 注文書はコチラをクリックしてください。
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子供の頃、ご近所や同級生に「伝書鳩(でんしょばと)」を飼っている人がたくさんいました。
伝書鳩というのは、は、カワラバト(ドバト)などのハトを飼い馴らして、ハトの帰巣本能を利用して、遠隔地からハトにメッセージや小さな荷物などを持たせて届けさせように育てたものです。
伝書鳩とヒトとの関わりはたいへん古くて、旧約聖書には、ノアの箱舟に小枝を届けた鳩の記述があり、紀元前約5千年のシュメールの粘土板にも使用をうかがわせる記述、紀元前3千年のエジプトでも漁船が漁獲量を陸に伝えるために使われていたという記録があります。
また、ギリシャのポリス(都市国家)間では、競技会(いまのオリンピック)の覇者について、鳩の足に赤いリボンを結び付けて故郷に勝利と栄光を伝えたのだそうで、ローマ帝国の時代になると通信手段として広く普及、そしてジンギスカンも、カエサルも、ナポレオンも、戦いの状況報告に伝書鳩を使っています。
日本でも伝書鳩は、飛鳥時代に輸入され、江戸時代には幅広く普及しました。
そして伝書鳩は、大東亜戦争でも、大活躍をしています。
昨日の記事で、パラオ・アンガウル島の戦いで、艦砲射撃で島内の通信がズタズタに切断された中、残った通信手段が伝書鳩しかなかったということを書きましたが、現代社会においても、なんらかの理由で電力の供給が止まったら、日本の情報通信ネットワークは、その時点で壊滅です。
充電しなければならない携帯は使えないし、電話もダメ、パソコンもテレビも全部、ダメ。真夏の猛暑にエアコンもダメ、高層ビルではエレベーターも停止です。
ローテクといって馬鹿にするようなことが、最後土壇場になると大きな力を発揮する。そして平時には不要不急に見えることが、実は災害などの非常時にはたいへん重要なことになる。そういうことを、日本人は忘れてはいけないのだと思います。
さて、伝書鳩です。
フランス革命のとき、王妃マリー・アントワネットは、投獄中に伝書鳩で外部の王党派と連絡を取り合っていました。その鳩は、雪のような純白の鳩だったそうです。なのでマリー・アントワネットは、その鳩を「La Naige(ラ・ネージュ、雪)」と呼んで可愛がっていたそうです。
日露戦争(1904~1905)では、旅順要塞のロシア軍が伝書鳩を使って外部と連絡を取りあっていました。
乃木大将率いる日本軍は、これにおおいに困り、宮中に鳩退治のために「鷹」を出動させてくれ、と要請したのですが、ところが鷹には鳩を襲う習性がありません。そこで宮中では、急いでハヤブサの育成をはじめたのですが、その訓練半ばで旅順要塞は陥落してしまいました。
伝書鳩は、第一次世界大戦(1914年~1918年)では、20万羽以上が使われています。
この時代には、電話も電信も普及していましたが、それだけに相手の情報通信の分断は、戦略上非常に重要な作戦となったわけです。
このため電話は電線を切断されしまってアウト、電信も未だ無線技術が確実性が乏しかった時代です。ですから伝令に伝書鳩は欠かせない存在でした。
ところが英国では、第一次大戦終了後、「もう戦争も終わったし、事業仕訳して経費を節減しちまえ」と、軍の鳩舎を閉鎖し、2万羽の伝書鳩と四百人の専門トレーナーを解雇してしまったのです。
一方、巨額の賠償費を取られることになった敗戦国ドイツは、長引く不況の中でも伝書鳩の飼育を継続し、ヒトラー率いるナチス党が政権を握って間も無くの昭和九(1934)年には、完全に法のもとで、伝書鳩を政府の保護下に置いて、育成しました。
そしてヨーロッパにナチスドイツが台頭し、再び戦争の影が差し始めた頃、ハイテク無線が通信の主役になっていたイギリス軍部にあって、オスマン少佐という人が、伝書鳩の重要性を説き続け、2年がかりで軍内部に伝書鳩局を開設させ、飛行機には万一に備えて必ず伝書鳩を搭乗させることを義務付けました。
けれどオスマン少佐は、周囲から、「無駄なこと」「経費の無駄遣い」とずいぶんと馬鹿にされたそうです。
そうした中で、第二次世界大戦が始まりました。
スコットランドを発った一機の英軍爆撃機が、ノルウェー沖で、エンジントラブルで墜落しました。
この機に搭載された伝書鳩のウィンキーは、なんと墜落の衝撃に堪え、海水と油にまみれてさんざんな状態になりながらも、二月の寒風吹き荒ぶ夜空の洋上を飛び続け、翌朝、未明には基地に帰還して鳩小屋係の軍曹に発見されました。
ウィンキーが帰還したとき、救助本部では既に墜落現場の捜索が、その広過ぎる捜索範囲に、もはや断念、とされていたのですが、ウィンキーの体の状態と凡その飛行時間から遭難現場の絞り込みに成功し、救命ボートで洋上を漂っていた乗組員、全員が無事救助されています。
この一件で、ウィンキーは戦時功労賞として、軍用犬18頭、軍馬3頭、伝書鳩32羽を受賞し、伝書鳩局は一躍脚光を浴びる事になりました。

米軍が、ドイツ軍の占領下のあるイタリアの街を爆撃しようとしたとき、英国軍がその町に到着すると、ドイツ軍はすでに撤退したあとでした。
そこで英軍は、「敵不在、爆撃中止」と米軍に伝えようとしたのですが、このこき、無線機が故障していることに気がつきます。
米軍と連絡が取れないのです。
爆撃開始予定時刻までは、あと20分しかありません。
そこで英軍は、「GIジョー」という名前の伝書鳩に、通信を託しました。
「GIジョー」は、米軍基地までの32キロの道程を、時速100キロノ猛スピードで飛び、間一髪、出撃直前の爆撃機部隊を止める事に成功しています。これによって命拾いした英国軍兵士の数は千人以上にのぼったそうです。
こうして英国軍の伝書鳩による伝令成功率は、なんと98%という成果となりました。
そこでこれに対抗してドイツは、フランスやベルギーから大量のハヤブサを放ってイギリス軍の伝書鳩を襲わせました。
ハヤブサは、水平飛行時の飛行速度は鳩と同じで時速100キロなのですが、獲物をとらえるために急降するときは、なんと時速300キロの猛スピードになります。この速度は、鳥類最高です。訓練を積んだ伝書鳩でも、これには敵わない。しかも、上空背後は、視野の広い鳩にとっても死角です。狙われたらまず助からない。
ところが、1942年にベテラン鳩飼育者チャーリー・ブルーワーがフランスに送り出した「エクセターのメアリー」は、何度もハヤブサの鉤爪を逃れて舞い戻りました。
ある時は胸を22針も縫う大怪我を負ったけれど、それでも回復すれば戦地に送られ、必ず戻ってきたそうです。
最近の研究で、賢い鳩は、ハヤブサが獲物を鉤爪にかけるときに、ほんの一瞬、空中で一時停止する、そのときを見計らって、羽ばたくことを停止し、石のように急速落下して逃げのびたのだとわかりました。
靖国神社に、伝書鳩たちのための鳩魂塔が立てられています。
日本の軍においても、伝書鳩は大活躍をしたのです。
そして、激しい戦闘の中、たくさんの伝書鳩が命を失って行きました。
ちなみに携帯電話の普及で、最近では、鳩の地磁気探知能力が影響を受け、1990年代後半から、日本国内でも迷子になって帰巣できない伝書鳩が激増しているそうです。いまでは、国内だけで、帰巣できない鳩が年間60万羽にのぼるそうです。


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