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歴史は、年号や事件名を覚えるためのものではありません。今に活かすべき知恵を得るための学問です。そういう教育を復活させることで、様々な側面を持つ日本の政治や法務、行政や産業などの「要(かなめ)」ができるのです。これを国民精神と言います。必要なことは、大人も子供も共に学べる新しい教育です。

20230330 天保の大飢饉
画像出所=https://www.aflo.com/ja/contents/20778664
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天保の大飢饉といえば、天保4年から天保10年まで、まる6年続いた大飢饉で、学校では「凶作のために全国で30万人以上もの餓死者が出た」と教わります。
このうち大阪市中での餓死者数は、およそ5000人。
全国の6分の1にあたる餓死者が大阪で生まれました。
なぜそんなにも多くの人が大阪でお亡くなりになられたのか。
実はそのことが、現代日本にもつながる大事な内容を含むのです。
そもそも備蓄米を常時二年分持つ日本では、二年以内の凶作なら、余裕で乗り越えることが可能です。
凶作が3年続き、4年続きになったとしても、大阪は全国のお米が集まる場所です。
ですから大阪では、数年続きの飢饉でも、それまでは余裕とまではいかないまでも、人々が餓死するような事態は防ぐことができていたのです。
このような時期に、江戸の将軍家では、天保8年に、11代将軍徳川家斉にかわり、徳川家慶が12代将軍に就任しました。
この時期に大坂東町奉行を務めていたのが跡部良弼(あとべよしひさ)です。
そしてこの跡部良弼の実の兄が、遠州浜松藩主で、西の丸老中、この時点でまだ将軍世子であった徳川家慶の補佐役であった水野忠邦です。
水野忠邦といえば、天保の改革で質実剛健を主張して奢侈禁止・風俗粛正を命じ、歌舞伎興行まで禁止するという徹底を図った老中首座と学校で習います。
さも人格者のように言われますが、幕政改革にたいへんな情熱を持つ人物で、そのためにありとあらゆることを実行してきた人物でもあるのです。
たとえば水野忠邦はもともとは長崎県唐津藩25万石の藩主です。
ところが水野忠邦は、15万石の浜松藩への国替えを自ら望んで実現しています。
普通に考えたら、20万→15万というのは、ありえない選択です。
なにしろ25万石なら、25万石分の家臣がいるのです。
それが15万石に減らされたら、家臣たちが飯が食えなくなる。
このため水野家家老の二本松義廉が諌死をして果てもいます。
どうして石高の少ない浜松藩への転封を願ったか。
それは浜松が、家康公ゆかりの藩だったからです。
つまり浜松の藩主となるということは、そのまま幕閣としての出世を意味するものであったのです。
そして水野忠邦は、幕閣内での出世のために、多額の賄賂をばらまいていました。
そんななかで、将軍家はいよいよ1代将軍として徳川家慶が就任間近という情況になります。
トップが変わるときは、出世のチャンスです。
そしてそのためには、多額の賄賂が必要となる。
そこで動員されたのが、実弟の跡部良弼です。
水野忠邦は、跡部を大阪東町奉行に赴任させ、天下の台所といわれた大阪で「将軍交代の準備」という名目で、大商人からせっせと米を買い集めて江戸に廻送させたのです。
この買い占めの時期が、天保の飢饉と重なりました。
そもそも米がないのです。
そのない米を奉行所が買い占めたらどうなるか。
答えは米価のとんでもない暴騰です。
そしてこの暴騰によって飯が食えなくなった大阪の一般庶民が、なんと5000人も餓死したのです。
この事件から学ばなければならない、いくつかの大切なことがあります。
それは「富は流出したら不足が起きる」ということです。
江戸時代の富はお米です。
現代はお金です。
そしてどちらも、外に向けてそれらが流出したら、みんなが貧乏になります。
先にも述べました通り、江戸時代の大阪は商業流通の中心地です。
ですから全国のお米が集まりました。
しかし、どんなにたくさんのお米(富)を集めてきても、その富が「外に」流出したら餓死者が出るのです。
現代の日本経済も同じです。
日本がせっせと良いものをつくり、これを外国に売って儲けたお金が「国内で」循環するから、日本が好景気になるのです。
一生懸命に働いても、儲けたお金が外国に流出したら、日本の景気が冷え込むのはあたりまえです。
貧血になるのです。
大規模店舗法が2000年に廃止され、地方都市に大型のショッピングセンターができるようになりました。
すると、それまでは、その都市の商業規模が年間30億円だったとすると、その30億円の売上を市内の商店街で分け合っていたものが、大型店に年間15億円持っていかれるわけです。
すると市内の商店の売り上げの合計が、30億から15億に減少する。
しかも市の税収は、それまでなら市内の商店から得ていたものが、大型店は本社が東京や大阪、あるいは外資なら海外にあるわけです。
つまり納税は、市外に行われることになる。
結果、市の商店街がシャッター通りになり、市の税収も下がって市の財源が減り、さまざまな行政サービスに影響が出る。
これが2000年以降の日本経済冷え込みの要因のひとつになっています。
こんな簡単な理屈は、少し考えたら誰にでもわかることです。
にも関わらず、大規模商業施設誘致のために、市をあげて努力をしてきた都市が、全国に多数あります。
結果、どの市も、市の経済が冷え込んでいます。
かつてのバブル経済に関する認識も、多くの人たちが間違えています。
バブル以前は、日本企業が、儲けたお金で、海外で投資を行っていたのです。
それが日米貿易摩擦の結果、海外での投資が困難になった。
このため、海外投資先を失ったお金が、いっきに日本国内に流れ込んできたわけです。
それで不動産価格が暴騰しながらも、景気が一気に加速しました。
それが実は、バブル経済と呼ばれるものの正体です。
そのお金が、今度は政治的に海外に流されることになった。
結果、国内に出回るお金が減り、いっきにバブル景気が冷え込みました。
要するに、お金もお米も同じなのです。
せっかく集めても、それが他所に流れ出せば、景気が冷える。
内側で回れば、好景気になるのです。
消費者が、一円でも安い買い物をしようと節約するのはOKです。
けれどそうやって節約して貯めたお金で海外のブランドバックを買ったら、富が海外に流出します。
消費者が、一円でも安い買い物をしようと、中国産品ばかりを買っていたら、これまた富はどんどんと中国に流出します。
すると日本経済は冷え、中国経済が好調になります。
家計も同じです。
父ちゃんが稼いだお金が、家庭内に据え置かれれば、その家庭はお金持ちになります。
どれだけたくさん稼いでも、稼いだ以上に外にお金が流出すれば、その家は貧しくなります。
天保の大飢饉で大阪で起きたこと。
その歴史から我々が学ぶべきは、ただ飢饉が起きたの、江戸時代は貧しかったのということではなく、そのときの経験を今に活かせる内容です。
そういう教育を復活させ、かつまた日本経済を復活させる。
そのために必要なことは、大人も子供も共に学べる新しい教育です。
※この記事は2023年3月のねずブロ記事のリニューアルです。
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