国家の根幹となる思想は、別の言い方をするならば「国民精神」ということになります。
その「国民精神」を英訳するなら、おそらくそれが「アイデンティティ(Identity)」です。
教育と文化によって、民衆こそが「おほみたから」であるとする日本の精神を取り戻すこと。
そこに日本の再生の鍵があります。

源義家像
20200527 源義家像
画像出所=http://www.takenakadouki.com/cms/w_all/cate_area/tohoku/fukushima/post_1007.html
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国民学校時代の小学5年生の国語教科書からの問題です。
(問題)以下の文を読んで問いに答えなさい。
義家がある日、安倍宗任(あべのむねとう)らをつれて、広い野原を通り過ぎようとしていたとき、一匹のキツネが走り出てきました。
義家は、背中に負った箙(えびら)から、かりまたの矢を抜いて弓につがえてキツネを追いかけました。
けれど殺してしまうのも不憫(ふびん)と思い、左右の耳の間を狙って、ひょうと矢を射ました。
矢はあやまたずにキツネの頭上をすれすれにかすめました。
けれどキツネは、前の土に刺さったその矢に突き当って倒れてしまいました。
宗任(むねとう)は馬から降りてそのキツネを引きあげながら、
「矢は当らなかったけれど、
 キツネは死んでしまいましたな」
と言いました。義家は、
「きっと驚いて死んだのであろう。
 捨ておかば、ほどなく生き返るであろう」と言いました。
宗任が矢を取ってさし出すと、義家は背を向けて箙(えびら)にその矢を差しました。
宗任はもと賊軍の頭だった人ですが、近ごろ義家に降った人です。
他の家来たちはこのさまを見て、
「危いことだ。
 鋭い矢を差すときに
 もし宗任に悪しき心があったならば・・・」
と、手に汗をにぎっていました。

 ****
さて問題です。
「宗任から矢を受け取った義家は、どうして宗任に背中を向けたのでしょうか。」

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20191006 ねずラジ
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宗任は、つい先ごろまで敵側の将であった人であり、激しい戦いを行った相手です。
その宗任に背中を向けたということは、宗任に自分を斬るスキを与えたということです。
答えは、キツネのやり取りにあります。
キツネはこのとき、たまたま矢にぶつかって気を失っていただけです。
けれどその気を失っているだけのキツネに宗任は、
「キツネは死んだ」
と述べています。
これが「謎掛け」です。
要するに宗任は、戦に破れて自分は死んだのだ、と言ったわけです。
これに対し義家は、
「たまたま驚いて死んだようになっているにすぎないですよ。
 かならずまた安倍氏の復活の日はやってきます」
と答えているわけです。
そして、そのことを
「宗任さん、信じられますかな?」
と、あえて背中を向けて自分を斬り殺せるスキを与えているわけです。
宗任は、義家のそんな男らしさに、信を感じ、義家を斬るということをしなかったのです。
つまり言外に、
「わかりました。
 義家殿、あなたを信じましょう」
と答えたわけです。
けれどこうした高度なやり取りは、近習の者にはわからない。
ただ「危いことだ」とオロオロするだけであった、というのが、このお話です。
互いの心に信を置くということは、日本古来の武家の伝統です。
激しい戦いをする武人だからこそ、信を大切にする。
そうした武人の姿は、世界ではあまり類例のないものです。
ではなぜ日本では、このような「信を置く」という高度な文化が生まれ、育まれたのでしょうか。
理由はやはり、我が国が天皇のシラス国を根本にしていることにあります。
民衆こそが「おほみたから」なのです。
その民衆のためにこそ、武人は激しい戦いを行います。
戦い自体が、個人の欲望のためではないのです。
これは「上を見るか下を見るか」という文化の違いでもあります。
諸外国では、歴史を通じて「富を寡占しているのが上の人」という伝統があります。
ここから「上の役に立てば、その富のおこぼれに預かれるし、個人の利益になる」という文化が生じます。
上が敵としたならば、それはどこまでも敵です。
そして敵であれば、情け容赦なく征圧し、粛清する。
宗教においてもこれは同じです。
王の権威は、宗教的権威によって神の意思として授けられます。
ということは、他に神様がいたら困るのです。
A教の神は王の権威を認めるけれど、B教の神は認めない、というのでは、王の権威そのものが成立しません。
だから一神教になります。
特定の神だけが神であり、他の神は認めない。
そうでなければ王の権威が成立しないからです。
そして王がその唯一絶対神から権威を授かれば、王は神の威光をもって民を治めることができます。
そして王国にあるすべては、神のものなのですから、神の威光を持つ国王がすべての所有者となります。
つまり国王は、国内において、何をやっても許される存在となります。
日本は多神教です。
天皇は、天照大御神から続く霊統と規程されます。
霊統があるのですから、あとは誰がどの神を信仰しようが、それは民の勝手です。
それで民が幸せになるのなら、何を信仰しようが構わないのです。
さらに民衆は、その神々の子孫ですから、民衆の幸せが国の幸せという概念になります。
つまり日本では、民衆が豊かに安全に安心して暮らせることが第一です。
そうでなければならないのです。
なぜなら天然の災害が多発する日本では、いざ災害となったとき、災害時の助け合いも、災害後の復興も、また災害による被災の予防にも、何よりも民衆の活力が必要だからです。
したがって、戦いもまた、王の利益のためでなく、どこまでも民衆の幸せのために行われます。
こうした文化性は、天皇の知らす国において、人々の上に立つ者の高い教養によって裏付けられます。
つまり上に立つものは、互いに信を交わすことができるだけの器量を備えた人物であることが求められたし、そうでなければ人の上に立つことができなかったのです。
そして上にあるような物語が語り継がれることによって、人々は、自分もかくありたいという文化意識を共有します。
そのことがまた、日本人の高い文化性を培(つちか)ってきたのです。
昨今の日本では、国民の代表であるはずの議会が、しなくても良い、議論の名にさえ値しない議論がいつまでもダラダラと続けられています。
民衆の幸せよりも個人の利益が優先されているからです。
よその国から利益を受けている団体や個人がいれば、その利益を受けている人や団体の利益が優先するからです。
このようなことでは、唯一絶対神を置く以外、国をひとつにすることはできません。
そしてその神は、近代以降は、共産主義という名の神であったりします。
しかしそのことは、必ずしも民衆の利益にはなりません。
とりわけ天然の災害が多発する日本では、民衆の生活に常にゆとりがなければ、国そのものが成立しないからです。
なぜなら、いざ災害というときに、ものを言うのは、日頃からの民間の活力だけだからです。
国家の根幹となる思想は、別の言い方をするならば「国民精神」ということになります。
その「国民精神」を英訳するなら、おそらくそれが「アイデンティティ(Identity)」です。
教育と文化によって、民衆こそが「おほみたから」であるとする日本の精神を取り戻すこと。
そこに日本の再生の鍵があります。
お読みいただき、ありがとうございました。

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