| 《ご連絡》 ① 4月11日に靖国神社で開催を予定しておりました『万葉集・日本書紀出版記念会』は、会場となる靖国神社内の靖国会館が、昨日政府からの要請で4月いっぱい利用停止となりましたため、まことに残念ながら当面延期になりました。 ② 新刊『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』は4月10日発売。ただいま予約受付中です。 |
| どんなに名人と言われる人でも、はじめから名人であったわけではありません。もっというなら、はじめから名人になろうと計画して、その計画に基づいて名人になったわけでもありません。かつて、ソ連がこれを行おうとして、まさに幼児のうちから計画的にスポーツ選手を養成するということを行いましたが、結果、破綻しています。 そうではないのです。俺はヘタだなあ。どうしてこんなにヘタなんだろうと悩みながらも、毎日少しづつ精進を積み重ねていくうちに、気がついたら、その道の名人になっているのです。 |

画像出所=http://kotenshohou.com/bun/onomitikaze.htm
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新型コロナウイルス問題で外出も規制となり、消費も極端に冷え込んで人によっては職場も失いかねない状況になっています。
残念ながらこれは新しい形の国際戦争であり、当面この状況は(夏場には一時的に沈静化するものの)まだまだ続くと思われます。
それこそ夢も希望も失いかねない現状ですが、ただひとつはっきりといえることは、事態が終息し新しい時代が始まるときは必ず来るということです。
その日のために、いまのうちからできることをしておく。
それは、計画性を持って何かをするということではなく、私たちがあきらめずに、いまできる最善を尽くすということです。
何が良かったのかは、いま最善を尽くしているうちに、結果として明らかになることです。
方向は3つ。
1 自力を付ける(読書、運動など)
2 扉を開く(自分自身を成長させる)
3 無理をしない(牙は温存させていく)
とりわけ今度の新刊の『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』は、そのために絶対に役立つ本です。(と、このように書くと宣伝になってしまいますが、いまの現状をかんがみるに、本当のことです。
さて、書道の大家といえば、小野道風(おののとうふう)・藤原佐理(ふじわらのすけまさ)・藤原行成ふじわらのゆきなり)、この三人が三蹟(さんせき)と呼ばれる、10世紀の能書家(のうしょか)です。
この三人のうち、たいへんな呑ん兵衛さんだったのが藤原佐理(すけまさ)で、国宝となっている「離洛帖(りらくじょう)」などをみると、書がものすごく崩してあって、ほとんど抽象画の世界みたいです。
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これに対し、同じ時代に生きた同じ能書家でも、一字一字がたいへんしっかりしているのが、藤原行成(ゆきなり)で、こちらは人物も沈着冷静で、天皇のおぼえもめでたく、晩年には正二位、権大納言の位にまで出世しています。
この行成(ゆきなり)が、人生をかけてまるで神様のように尊敬していたのが、小野道風(とうふう)です。
実は少し前までは、この人物はたいへんな有名人でした。
たいていの男性は、その名前をよく知っていたのです。
その理由が、下の絵です。

なんだ花札かい!と思われたかもしれませんが、ここに描かれている図柄の人物が、小野道風です。
絵をよく見ると、上の方に黒く描かれているのが柳の枝で、真ん中にいる人物が小野道風、その後ろに水が流れていて、道風が傘をさしています。
で、手前にも川が流れていて、杭(くい)があり、その横でカエルが柳の枝に飛びつこうとしています。
実は、この絵柄は、小野道風の故事にちなんだものです。
ご存知の方もおいでかもしれませんが、簡単に書くと、
小野道風は、子供の頃、勉強ができず、字もへたくそ、和歌も下手、悔しいけれど、生まれつき出来がわるいのだから仕方がないと、これまたあきらめていたそうなのです。
で、自己嫌悪になってしまって、悩みながら歩いていたある雨の日、ふとみると、一匹のカエルが、地面から、垂れ下がった柳の枝に飛びつこうとして、何度もなんども跳ねている。
そんな光景を、傘をさしてボーっと眺めていたわけですから、道風先生、このときはよっぽど、へこんでいたのでしょうね。
ところが、そのときです。
偶然、強い風が吹いて柳がしなり、見事にカエルが柳に飛び移ったのです。
これを見た道風は、ハタと気がつきます。
「カエルは一生懸命努力をして、偶然のチャンスを自分のものとした。けれど俺は何の努力もしていない」
目が覚めるような思いをした道風は、その後、精進を重ね、日本一の書家になりました。
このお話は、史実かどうかは不明で、広まったのは江戸時代中期の浄瑠璃からです。
戦前は、このお話は国定教科書にも載っていて、たいへんに有名というより、日本人の常識となっていたお話でした。
記紀にある神話の物語などもそうなのですが、日本のこうした故事に関するお話の多くは、「成長」がキーワードになっています。
つまり、はじめはダメ人間だったけれど、機会を得て人間として大きく成長していく。
逆にいえば、はじめから全てを兼ね備えたような人などそうそうはいないわけで、みんな自分の至らなさ、足りなさに悩み苦しむのが普通です。
だからこそ努力するし、努力するから成長できます。
もちろん、何かに特別な才能を発揮できる子もいます。
けれどそういう子であっても、別な部分においては、やはり出来の悪い子と同じように悩むのです。
そういう意味では、みな、同じです。
戦前は、そういうことを、小学校の低学年のうちにキチンと教えていたし、それをあたりまえの常識にしていました。
だから庶民の遊戯札である花札に、小野道風が描かれていたのです。
ちなみにこの花札の絵柄の「雨にカエル」は、最高役の20点札です。
どんなに名人と言われる人でも、はじめから名人であったわけではありません。
もっというなら、はじめから名人になろうと計画して、その計画に基づいて名人になったわけでもありません。
かつて、ソ連がこれを行おうとして、まさに幼児のうちから計画的にスポーツ選手を養成するということを行いましたが、結果、破綻しています。
そうではないのです。
俺はヘタだなあ。どうしてこんなにヘタなんだろう、と悩みながらも、毎日少しづつ精進を積み重ねていくうちに、気がついたら、その道の名人になっているのです。
オリンピックに出るようなスポーツ選手も、あるいは全国大会に出るような中高生のスポーツチームも、動機は様々だけれど、なんとなくバレーボールが好き、あるいは入学したとき、先輩からバスケットボールをやったら女の子にモテるぞと言われて、それでまじめに練習していたら、気がつけば強いチームになっている。
そこに優秀な、これまたどうしてコーチになったかわからないけれど、絶対に生徒たちに勝利の経験をさせてあげたいと思う先生が、毎日、いろいろに工夫しながら、一生懸命に生徒たちに教える。
それら全部の力が、合わさったときに、おそらく優勝という結果が生まれています。
天才は、はじめから天才ではないのです。
おもしろいから、楽しいから、探究心があるから、まじめだから、そのことを一生懸命に毎日やっているうちに、気がついたら周囲から天才と呼ばれるようになっているのが天才なのです。
そして、そのことを、かつては誰もが小野道風の花札の絵柄から、学んでいたのです。
お読みいただき、ありがとうございました。

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