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素晴らしい日本文化を、どうしていまの日本人は否定するのでしょうか。
どうして日本という国の素晴らしさを、進んで学ぼうとしないのでしょうか。


志村立美の「木場」
20200202 志村立美 木場
画像出所=https://syuppanbi.com/?attachment_id=599
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

TOPの絵は、戦前から戦後にかけて一世を風靡した画伯、志村立美の「木場」という絵です。
志村立美は、戦前、岩田専太郎、小林秀恒などとともに「挿絵界の三羽烏」とうたわれた人で、戦時中は戦争画もたくさん残しておいでになります。
なかでも志村立美は、戦後、晩年に至ってから日本画の美人画を追求し続けた人で、上の「木場」の女性も、ちょっと姉御風で、凛々しくて、理知的、艶やかで、芯も強そうで、それでいてしっかりとした道徳観をもっていそうで、けれど情が深くてこまやかで、なんだかもともとの日本人女性が持つ美しさを、まるごと表現しているかのようです。
木場の様子をちょいとばかり見に来た若衆頭の姉御(あねご)さんでしょうか。
ふとしたはずみにすこし振り返った瞬間に気品が漂います。
なんだか絵に描かれていない、木場の新鮮な材木の香り、青く澄み渡った空、手前にある木材の運河、そこで働く元気な職人さん達の姿といった見えない背景までも、脳裏に浮かんでくるかのようです。
そこにちょいと佇(たたず)む姐(ねえ)さんの、まるで匂い立つような艶(つや)っぽさ。
簡素であっさりとした絵柄なのに、そんな辺りの風景や香りまでをも表現してしまっています。

20191006 ねずラジ
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下の絵は、同じく立花立美の「初詣」で、こちらはちょっとお若い、振り袖姿の女性です。

志村立美「初詣」
20200202 志村立美 初詣
画像出所=https://www.pinterest.jp/pin/526569381418452522/

場所は神社の入り口付近にある手水舎(ちょうずしゃ)なのでしょう。
女性は左手に柄杓を持ち、ちょっと伏し目に描かれています。
神社の手水舎の作法は、
(1)まず右手で柄杓を取って左手を洗い
(2)次に左手に持ち替えて、右手を洗い
(3)右手に持ち替えて左手に水を受けて口を漱ぎ
(4)再度、左手を洗って
(5)柄杓を立てて、柄に水を流したあとに
(6)柄杓を元の場所にふせて置く。
というものです。
ということは、この女性は、ちょうど右手を洗い終わり、洗った右手を袂でそっと拭いて、お口をゆすぐ、その直前の様子なのでしょう。
静止した絵なのに、そういった動きが生き生きと感じられる、たいへんに躍動的な絵になっています。
そしてそのことが同時に絵の女性の溌剌とした若々しさも表現しています。
このように、絵から不要なものを一切排除しながら、絵の周囲の様子や背景、人物の動きなどを鑑賞する人にイメージさせることで伝えて絵に奥行きを与えるのが、日本画の特徴です。
こうした手法は、和歌や短歌でも同じで、無駄なものを一切省きながら、花や季節、仕草などで、描いた内容だけでなく、色彩や風景など、背景にある様々なものを一緒に描き出す。
これが日本文学や日本画の特徴です。
単に見かけだけではない。
もうひとついうなら、西洋画では女性美を描くのに女性を裸にすることが多いけれど、日本画は、服を着た姿で描かれます。
これは西洋画が主に女性の外見や肉体の美しさを描くのに対し、日本画は人としての精神性の美しさを追求するという姿勢の違いであるともいわれます。
しかも日本画というのは、油絵のような「重ね描き」をしません。
これは出来上がった絵画を、掛け軸などのように、絵を巻いて収納するから、したくてもできない。
ですから、どの絵も、いわばぶっつけ本番の下絵なしで、こうした美の世界を描きます。
ゴッホやモネなど、絵を知る欧州の名画家が、こぞって日本画の美しさの虜になったのもうなづけるというものです。
ちなみに、この絵を描いた志村立美は、丹下左膳を有名にした人としても知られています。
丹下左膳といえば、大河内伝次郎の「シェイは丹下、名はシャゼン」の名台詞が有名ですが、最近では映画で
豊川悦司、テレビドラマで中村獅童がこれを演じています。
隻眼隻腕のこの剣豪は、実は空想上の剣士で、もともとは昭和2年に新聞小説として連載された林不忘の「大岡政談」の中に登場した人です。
この物語の中で丹下左膳は、名刀「関の孫六」をめぐって争う一端役として登場するのだけれど、これを志村立美が挿絵にしたことで、隻眼隻腕着流し姿の、ちょっと恐ろしげな剣士のイメージが、当時大評判になったのです。
あまりの人気ぶりから、志村立美の絵のイメージそのままに丹下左膳が主役で映画化され、なんと以降、団徳麿、嵐寛寿郎、大河内伝次郎、月形龍之介、阪東妻三郎、水島道太郎、大友柳太朗など名だたる名優がこぞって主演、戦後には丹波哲郎や中村錦之助も、この丹下左膳を演じています。
最近ではトヨエツや中村獅童なども演じているけれど、そのイメージはもともとは志村立美が描き出したものです。
その丹下左膳の「絵」が、↓です。
20200202 志村立美 丹下左膳
画像出所=https://ameblo.jp/yojiro/entry-11105107219.html

いやはや、たしかに絵になる姿です。
ちなみに丹下左膳が争った名刀「関の孫六」は、三島由紀夫が割腹自殺した際に用いた刀としても有名です。
その三島由紀夫に関孫六をプレゼントしたのが、渋谷で大手書店ビル「大盛堂」を経営していた舩坂弘さんで、舩坂さんは、パラオのアンガウル島の玉砕戦での生き残りの方です。
アンガウルとペリュリューでの舩坂さんの活躍は、後年映画「ランボー」の挿話としても描かれた実に壮絶なもので、いま渋谷の街が新宿、池袋と比べて健全性を保った街になっているのも、舩坂さんの影響が大であったといわれています。
昨今の日本では、反日がいわば常態化し、日本のもつ素晴らしさや良さ、日本文化の持つ深みや精神性などが、忘れさられようとしています。
けれど、日本が培(つちか)った日本文化は、実は世界中で絶賛されています。
バカにしているのは、その素晴らしさが理解できない、欲に駆られた特定の人たちだけです。
下にご紹介している動画は、上村松園です。
是非、ご覧いただきたいと思います。
戦時中でも、日本美を追求し続けた松園の絵は、日本人の日本的心を実に精緻に、細やかに語って聞かせてくれています。
こういう素晴らしい日本文化を、どうしていまの日本人は否定するのでしょうか。
どうして日本という国の素晴らしさを、進んで学ぼうとしないのでしょうか。
※この記事は2012年2月の記事のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。

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