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| 美しさ、歌と音楽、賢(かしこ)さと狡(ずる)さと好奇心。これは人間にとっての災(わざわ)いだ・・・・。 ギリシャ神話の女性観は、ちゃんと読んだらびっくりされるかもしれません。 |
《ジョン・D・バッテン〈パンドラの創造〉》

画像出所=https://artuk.org/discover/artists/batten-john-dickson-18601932
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)
西洋文学では、女性についての描写は、やはり神話がもとになっているといわれています。
西洋には様々な民族種族がありますが、殺し殺されの歴史の中で、それぞれの民族ごとにおそらくはあったであろう神話が失われ、結局、ルネッサンス時代に、ギリシャ・ローマの時代に帰れという文化運動の中で、彼らのとっての神話はギリシャ神話に依拠することになったといわれています。
そしてそのギリシャ神話では、プロメテウスの犯した罪のために弟のエピメテウスがオリンポスを追放されて地上で人間とともに暮らすことになったとき、ゼウスが人間にも罰をあたえようとして何でも作れる鍛冶屋の神のヘパイストスに造らせたのが女性とされています。
できあがった女性に、ゼウスは命を吹き込むのですが、このときゼウスは、女性に、
「美しさ、歌と音楽、賢(かしこ)さと狡(ずる)さと好奇心」
を与えます。
そしてこのときのゼウスの言葉が、
「これは人間にとっての災(わざわ)いだ」
です。
つまり女性は、災(わざわ)いである、というのが西洋における神話の立場です。
このときに造られた「人間の女性」が、パンドラです。
パンドラは、鍵のかかった箱を持たされて地上へと降ろされるのですが、これが「パンドラの箱」です。
それまでの地上の人間の世界は、誰もが正直者で平和な社会だったのですが、地上でエピメテウスと出会い結婚したパンドラは、ある日、神に授けられた好奇心から、そのパンドラの箱を空けてしまいます。
すると箱の中から、夜の女神ニクスの子供たちが飛び出します。
その子供たちというのが、老い、病気、痛み、嘘、憎しみ、破滅であり、最後に争いの女神のエリスが高笑いとともに箱から飛び出していきます。
こうして世界には混乱と戦乱、嘘や憎しみや病気や破滅が広がっていったとされています。

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最後に箱の底に残ったのが「希望」というのは有名な話ですが、大切なことは、世界に老い、病気、痛み、嘘、憎しみ、破滅や争いがあるのは、すべて女性の「せい」であり、その女性はそもそも美しさ、歌と音楽、賢(かしこ)さと狡(ずる)さと好奇心のかたまりであって、人間社会を堕落させるものである、というのが、西洋における女性の、いわば「定義」となっているわけです。
西洋では、いまでも女性を殴るということが普通に行われますが、そうでもしなければ狡猾で好奇心と欲望のかたまりである女性と「人類は」共存することができない、という文化が基底です。
「人類は」と書きましたが、要するにギリシャ神話の時代から、人類というのは男性社会のことだけを言うのであって、女性は人類の一部とはみなされないというのが、彼らの文化の根底をなしているわけです。
英国文学でハーベイの『テス』という小説があります。
大好きな小説で、英国文学で最高の小説をひとつあげろと言われたら、迷わず『テス』をお勧めしているくらいですが、その主人公の女性のテスは、たいへんに魅力的な女性なのですが、やはり何を考えているのかよくわからない存在として描写されています。
日本人の感覚からすると「?」マークがいっぱい付いてしまいそうな捉え方ですが、ギリシャ神話を読むと、それが西洋社会における女性の定義なのだとわかります。
これに対し日本の文学では、たとえば古事記を例に出しますと、まず最高神は天照大御神であって、これは女性神です。
そしてその最高神と直接会話を交わすことができるのは、やはり女性神である天宇受売神(あめのうずめ)です。
男性の神々は、天照大御神に何事かを奏上するときも、あるいは天照大御神からのご下命をいただくときも、常に女性神である天宇受売神を通してでなければならないとされます。
これは縄文以来の日本人の伝統的思考で、子を産むことができる、つまり命を産むことができる女性は、もっとも神に近い存在であると規定しているわけです。
ですからいまでも、たとえば神社で御神楽を奉納するときに、神様に捧げる舞を踊るのは女性の巫女さんに限られます。
男性が舞う御神楽は、聴衆に御神楽や神様を説明するための舞しかありません。
つまり、
女性の御神楽舞は、神様に捧げる舞。
男性の御神楽舞は、聴衆に説明をするための舞、
と定義され、これがいまでも固く守られているわけです。
ところが一瞬にして様々な情報を同時並行で処理する能力を持った女性に、男性は歯が立たない。
このため、男女の間には様々な葛藤があり、心のすれ違いがあり、だからこそそれが文学のテーマとなる。
紫式部の『源氏物語』も、不器用だけれど誠実な光源氏に、女性たちが恋心を抱いてさまざまにモーションをかけるのだけれど、不器用な光源氏は、そういうことにぜんぜん気づかない。
これを現代版に置き換えると、いわば大ヒットしたテレビドラマの『東京ラブストーリー』みたいなものです。
千年前も、いまも、日本人は、そういう物語を愛するのかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。

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