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ススキとセイタカアワダチソウの戦いは、どこまでも共存共和をたいせつにする日本人の、ある意味、戦い方を示していてくれているのかもしれません。


セイタカアワダチソウ
20191031 セイタカアワダチソウ
画像出所=https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/seitakaawadachisou.html
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

このお話は、毎年この時期に掲載しているお話です。
ところがちょっとずつ様子が違ってきまして、テーマは同じなのですが、記述内容は毎年少しずつ変わってきています。
このブログを書き始めたのが2008年でしたから、かれこれ11回目の掲載です。
セイタカアワダチソウというのは、上の写真の草で、いまや全国に広がっていますから、あの毒々しい黄色い穂先は、皆様ご覧になられたことがあろうかと思います。
いまから20年ほど前までは、もう本当に東京の河川敷や堤防などは、この時期、セイタカアワダチソウだらけで埋め尽くされていました。
だいたい日本の古くからの草花というのは、だいたい中間色系がおおいのです。
黄色といえば、菜の花ですが、その花の黄色だって、中間色というか、すくなくとも毒々しさは感じさせません。
ところがセイタカアワダチソウは、山吹色の、それこそ毒々しい色で野山を埋め尽くしてしまう。
それもそのはずで、セイタカアワダチソウというのは、戦後にGHQとともに日本にやってきた種で、もともとはキク科の植物だったのですが、とにかく北米大陸というのは土地が痩せているし、湿度も日本では考えられないような、湿度20%なんてことが年中起こる土地柄です。
この20%というのはすごくて、クチビルなどは、すぐに乾燥してカサカサになってしまうし、だから土地も乾いた赤土の、要するに西部劇に登場するような土地になっているわけです。
そんな土地で繁殖するために、セイタカアワダチソウは、実に独特の進化を遂げた結果、まずはとにかく繁殖力がすさまじい。
ある年に、一本のセイタカアワダチソウが生えたと思ったら、翌年には植物のないような土地に、いつのまにかポツリポツリと花を咲かせ、翌年になると、あたり一面がセイタカアワダチソウだらけになってしまいます。
つまり、植物にとって過酷な環境にあっても、そこで猛烈に繁殖できる、すさまじい繁殖力を持っているわけです。
そんなセイタカアワダチソウが日本にやってきたから、さあ、たいへんです。

20191006 ねずラジ
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日本は、ご存知のように高温多湿で、植物にとってはたいへんに住みよい環境です。
しかも土地は肥えている。
それまで、厳しい環境化で繁殖してきたセイタカアワダチソウです。
日本の土壌では、まさに、水を得た魚のようなもので、またたく間に、日本全国にその繁殖地を広げて行きました。
問題は、その繁殖でした。
セイタカアワダチソウは、繁殖するに際して、根から毒素を出すことで、他の植物を全部殺してしまうのです。
それだけではなく、土中のミミズやモグラなども殺してしまう。
このことが何を意味しているかというと、日本の植物体系が変わってしまうということなのです。
実は、筆者が中学生の頃、少年マガジンだったか少年サンデーだったか、巻頭のカラーページに、このセイタカアワダチソウのことが掲載されたことがあります。
それは、ある日本の植物学者さんが、セイタカアワダチソウの繁殖に危機感を抱き、なんとかしてこれを駆逐しないと、日本の古生種の他の植物(おみなえし、オイランソウ、ススキ、コスモス)など、この時期に咲く草花が、滅んでしまう。
そのことを、その学者さんは必死で行政に訴えたのだけれど、政府は何もしない。
地方行政も動いてくれない。
やむなくその学者さんは、少年マンガ誌に、セイタカアワダチソウによる日本の植物体系の危機を特集してもらい、少年たちに次世代を託そうとしたのです。
あれから半世紀。
結局、行政は何もしないまま、日本の野山や堤防や空き地などでは、セイタカアワダチソウが猛威を揮うようになりました。
20年ほど前までは、本当に、どこもかしこもセイタカアワダチソウだらけだったのです。
ところが、です。
セイタカアワダチソウが、数年前から、自滅を始めたのです。
なぜか。
彼らは、繁殖しすぎたのです。
先に述べましたように、セイタカアワダチソウは、きわめて排他的な植物です。
根から毒素を出して、他の植物を排斥してしまう。
ところが、日本の土壌は、まさに彼らの繁殖に適した肥えた土壌ですから、その毒素が、逆に彼らの命を奪い始めたのです。
つまり、北米では考えられないほど密集して繁殖した結果、土中の毒素の量も半端なく増え、結果、彼らは自滅を始めたのです。
これに代わって、勢力を盛り返してきたのが、ススキです。
ススキはイネ科の植物で、日本の古生種です。
穂は食用になり、葉と茎は、屋根材として活用されてきました。
これを「茅葺屋根(かやぶきやね)」と言います。
そしてその屋根材を確保するために、全国の村々では、ススキ畑を作っていました。
そんなススキ畑があったところは、いまでも「茅場町(かやばちょう)」などの名前で残っています。
ススキは、何もない荒れ地でも繁殖します。
そして土中深くに根を張り、土を耕し、ミミズやモグラなどが住みよい環境をつくります。
さらにススキが繁殖したあとには、様々な野山の植物が、ススキと共存して咲き、また土が肥えることから、そこに樹木を繁殖させていきます。
つまりススキは日本の国土を育くむ役割をも担いながら、日本人とともに発展してきた植物です。
そんなススキは、セイタカアワダチソウが猛威を揮っている間、土中に静かに寝を張り続けました。
そしてセイタカアワダチソウが自滅をはじめたとき、その間隙を縫って、改めて茎を伸ばし、穂を貼り始めました。
けれど、そんなススキは、土中のセイタカアワダチソウの毒素を吸い上げた結果、去年くらいまでは、穂が、まるで白髪頭のように、真っ白になっていました。
ところが今年になると、ススキの穂は、昔のままにすこし茶色がかった、もとの姿を取り戻しました。
そして、これまでセイタカアワダチソウが猛威をふるっていた場所は、いまや、その大半が、ススキの繁殖地になっています。
さらにススキが、土中の毒素を吸収し分解してくれた結果、土中のモグラやミミズも、戻ってきました。
またススキの間には、オミナエシなどが、昔のままの美しい花を咲かせるようにもなりました。
日本は、天然の災害が非常に多い国です。
ですから、排他的に自分たちだけのわがままで生きることは、動物であれ、植物であれ、結局はできないのです。
いずれ、時がくれば、わがままな、自分たちさえ良ければという種は、日本の国土の中では自滅していくのです。
いまでもセイタカアワダチソウは、野山に咲いています。
けれど、昔のような、猛威をふるった、あの姿はありません。
猛威の頃は、高さ4m位にまで生育したものですが、いま生き残っているセイタカアワダチソウは、いずれも、せいぜい1メートル。
そして、不思議なことに、他の植物と、あのセイタカアワダチソウが「共存」の道を歩み始めたのです。
ススキとセイタカアワダチソウの戦いは、こうして、ススキが勝利したのです。
日本にわがままな外国人がやってくると、はじめのうちは自分たちのコミュニティ内ばかりを贔屓(ひいき)します。
そして電車に乗るときにも、黙って静かに駅のホームに並んでいる日本人が馬鹿にしか見えないのだそうです。
だから、平気で横入りして、座席を陣取ったりします。
けれど、永く日本に住んでいる内に、気がつくと自分も、静かに駅のホームに並ぶようになる。
生まれや育ちが違っていても、いつの間にか、日本人になっていく。
ススキとセイタカアワダチソウの戦いは、どこまでも共存共和をたいせつにする日本人の、ある意味、戦い方を示していてくれているのかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。

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