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前回、天照大御神から素戔嗚尊(すさのをのみこと)誕生までの日本書紀本文を紹介しましたが、今回は「一書曰(あるふみにいわく)」として日本書紀が紹介している11編の異説を訳してみます。
たいへんに長いものですので、何回かに分けてご案内します。
くどいようですが、ここは本文ではなく「一書(あるふみ)」に書かれた記述です。

(1)一書の1
<原文>
一書曰、伊弉諾尊曰「吾欲生御宇之珍子。」乃以左手持白銅鏡則有化出之神、是謂大日孁尊。右手持白銅鏡則有化出之神、是謂月弓尊。又廻首顧眄之間則有化神、是謂素戔嗚尊。即大日孁尊及月弓尊並是質性明麗、故使照臨天地。素戔嗚尊、是性好残害、故令下治根國。珍、此云于圖。顧眄之間、此云美屢摩沙可梨爾。
<読み下し文>
一書(あるふみ)に曰(いは)く。
伊弉諾尊(いさなきのみこと)曰(のたまは)く、
「吾(われ)、御宇(あめ)の珍(うず)の子(みこ)を生(うま)むと欲(おも)ふ」
乃(すなは)ち、左(ひだり)の手を以(もち)て、白銅鏡(まそかがみ)を持(と)りたまふとき、則(すなは)ち化(な)り出(いず)る神有(あ)り。
是(これ)を大日孁尊(おほなむちのみこと)と謂(まを)す。
右(みぎ)の手(て)に白銅鏡(まそかがみ)を持(もち)つとき、則(すなは)ち化(な)り出(いず)る神(かみ)有(あ)り。是(これ)を月弓尊(つくゆみのみこと)と謂(い)ふ。
又(また)首(みぐし)を廻(めぐら)して顧眄之間(みるまさかり)に則(すなは)ち化(な)る神(かみ)有(あ)り。是(これ)を素戔嗚尊(すさのをのみこと)と謂(まを)す。
即(すなは)ち、大日孁尊(おほひるめのみこと)及(およ)び月弓尊(つきゆみのみこと)は、並(なら)びて是(こ)れ質性明麗(ひととなりてうるはし)。
故(ゆゑ)に天地(あめのした)に臨(のぞ)みて照(て)らして使(つか)ふ。
素戔嗚尊(すさのをのみこと)は、是(こ)れ性(さが)、残(そこな)ひ害(やぶ)るを好(この)む。
故(ゆゑ)に、根國(ねのくに)に下(くだ)し令(せし)む。
(珍(うず)、此(これ)をば于圖(うず)と云(い)ふ。顧眄之間(みるまさかり)、此(これ)をば美屢摩沙可梨爾(みるまさかりに)と云(い)ふ。)
<現代語訳>
ある書によれば、イザナキノミコトが「私は天下に珍神子(うずのみこ)を生もうと思う」とのべられて、左手に白銅鏡(まそかがみ)を持たれると、大日孁尊(おほなむちのみこと)がお生まれになられました。
次に右手に白銅鏡(まそかがみ)を持たれるとを月弓尊(つくゆみのみこと)がお生まれになりました。
次に首をめぐらせて横目で見たときに、素盞嗚命(すさのをのみこと)がお生まれになりました。
大日孁尊(おほなむちのみこと)とを月弓尊(つくゆみのみこと)は、ともに性質が明(あき)らかで麗(うるわ)しい神様でしたので、天地を照らす神様としました。
素盞嗚命は、残害を好む性質だったため、根国に下しました。
(珍は「ウズ」と読みます。顧眄之間は「みるまさかりに」と読みます)
<解説>
最初の一書では、蛭児(ひるこ)は出てきません。
はじめに「イザナキノミコトが、私は天下に珍神子(うずのみこ)を生もうと思うと述べられた」とあります。
「珍」と書いて「ウズ」と読むようにと注釈がありますが、「ウズ」というのは、天子だけが手にすることができる比類のない立派な道具のことです。
ですから「珍神子」であれば、イザナキだけがなしうる「比類のない立派な神様」、といった意味になります。
ちなみにここでは、本来、生むのは女性神のイザナミのお役目のはずですが、なぜかこの書は、男性のイザナキによる単体での神生みという記述になっています。
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このイザナキが、左手に鏡を持ったときに生まれたのが大日孁尊(おほひるめのむち、天照大御神のこと)で、右手に鏡を持ったときに生まれたのが月弓尊(つきゆみのみこと)とあります。
左手と右手が書かれていますが、古来、我が国では「左」が上、「右」が下です。
「ひだり」の「ひ」とは「霊(ひ)」のことで、御魂を意味します。
「みぎ」の「み」は「身」のことで、肉体を意味します。
何事においても「左」が上、「右」が下とされますから、ここでも高貴な方が大日孁尊だよ、と書かれているわけです。
手にした鏡の「白銅鏡(まそかがみ)」ですが、これは銅と錫(すず)の合金制の鏡のことで、銅鏡よりも表面がよく澄んで見やすい鏡のことで、この「まそかがみ」がなまって、後には「ますかがみ」と呼ばれるようになったと言われています。
三番目に生まれたのが素盞嗚命(すさのをのみこと)です。
素盞嗚命は、イザナキが「首を廻(めぐら)して顧眄之間(みるまさかりに)」生まれたとあります。
「顧眄之間」は、末尾に注釈があって、これで「みるまさかりに(美屢摩沙可梨爾)」と読みなさいとあります。
「眄」という字は、横目で見ることを意味する漢字ですので、首をまわして「横目で見たときに」素盞嗚命が生まれたわけです。
その横目で見たときの子であったからかどうか、素盞嗚命の性質は「残害」だと書かれています。
「残」という字は「歹+戔」で、「歹」は白骨死体のこと、「戔」は戈(ほこ)を重ねた象形で、複数の戈で遺体をズタズタに切り裂くという意味の会意象形文字で、そこから酷いとか損なうといった意味を持つようになった字です。
「害」は「宀+丯+口」で、「宀」は家の中、「丯」は切り刻む、「口」は口唇から言葉を連想させることで、要するに家の中で口答えして抵抗する者を斬り刻むといった意味の象形です。
つまり「残害」は、暴力的にいろいろなものを損なうといった意味を持つ言葉とみることができます。
そこで素盞嗚命は、根国(ねのくに)に下(くだ)した、とあります。
「下した」というくらいですから、根国は、イザナキがおわすところよりも下位に位置する国であるとわかります。
同時に「根国」は、「根」が地中を意味しますから、内陸部にある国とも読み取ることができます。
(2)一書の2
<原文>
一書曰、日月既生。次生蛭兒、此兒年満三歳、脚尚不立。初、伊弉諾、伊弉冉尊巡柱之時、陰神先発喜言、既違陰陽之理、所以、今生蛭兒。次生素戔嗚尊、此神性悪、常好哭恚、國民多死、青山為枯。故、其父母勅曰「假使汝治此國、必多所残傷。故汝、可以馭極遠之根國。」次生鳥磐櫲樟橡船、輙以此船載蛭兒、順流放棄。次生火神軻遇突智、時伊弉冉尊、為軻遇突智、所焦而終矣。其且終之間、臥生土神埴山姬及水神罔象女。即軻遇突智、娶埴山姬、生稚産靈、此神頭上生蠶與桑、臍中生五穀。罔象、此云美都波。
<読み下し文>
一書(あるふみ)に曰(いは)く。
日月(ひつき)既(すで)に生(うま)れ、次に蛭兒(ひるこ)を生(う)む。
此(こ)の兒(みこ)、年(とし)三歳(みとせ)に満(なり)ぬれど、脚(あし)尚(なほ)立(たた)不(ず)。
初(はじ)め、伊弉諾(いざなき)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)が柱を巡(めぐ)る時、陰神(めのかみ)喜(よろこび)の言(こと)を先(さき)に発(あ)ぐ。
既(すで)に陰陽(めを)の理(ことは)りに違(たが)へり。
所以(このゆゑ)に、今(いま)蛭兒(ひるこ)を生(う)む。
次に素戔嗚尊(すさのを)を生(う)む。
此神(このかみ)の性(さが)悪(いまは)しくして、常(つね)に哭(な)き恚(ふつく)むを好(この)み、國(くに)の民(ひとくさ)多(さは)に死(し)し、青山(あおやま)を枯為(からす)。
故(ゆゑ)に、其(そ)の父母(かぞいろ)勅(みことのり)して曰(いは)く、
「假使(たとひ)、汝(いまし)が此國(このくに)を治(し)らさば、必(かなら)ず残(そこな)ひ傷(やぶ)る所(ところ)多(おほ)けむ。
故(ゆゑ)に汝(な)は、以(もち)て極(きはめ)て遠(とほ)き根國(ねのくに)を馭(しら)す可(べ)し。」
次(つぎ)に鳥磐櫲樟橡船(とりのいわのくすのきのふね)を生(う)む。
輙(すなは)ち此(こ)の船(ふね)を以(も)ちて蛭兒(ひるこ)を載(の)せて、流(なが)れの順(まま)に放(う)ち棄(す)てる。
次(つぎ)に火(ひ)の神(かみ)の軻遇突智(かぐつち)を生(う)む。
時(とき)に伊弉冉尊(いさなみのみこと)、軻遇突智(かぐつち)の為(ため)に、所(ところ)を焦(や)かれて終(かむさり)まし矣(ぬ)。
其(そ)の終(かむさり)まさむとする間(あひだ)に、臥(ふ)して土(つち)の神(かみ)の埴山姬(はにやまひめ)、及(およ)び水(みず)の神(かみ)の罔象女(みつはのめ)を生(う)む。
即(すなは)ち軻遇突智(かぐつち)、埴山姬(はにやまひめ)を娶(めと)りて、稚産靈(わくむすひ)を生(う)む。此(こ)の神(かみ)の頭(かしら)の上(うへ)に蠶(かいこ)と桑(くわ)生(な)れり。
臍(ほそ)の中に五穀(いつくさのたなつもの)生(な)れり。
(罔象と書きて美都波(みつは)と云(い)ふ)
<現代語訳>
ある書には、日月が先に生まれて、次に蛭兒(ひるこ)が生まれたとあります。
この兒(みこ)は、満三歳になっても足が立ちませんでした。
これは、初めに伊弉諾(いざなき)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)が柱を巡(めぐ)ったときに、女性神である陰神(めのかみ)が先に喜(よろこび)の言葉を発(はつ)したことによります。
それが陰陽(おんみょう)の理(ことは)りに違(たが)えたので、蛭兒(ひるこ)が生まれたのです。
次に素戔嗚尊(すさのを)を生みました。
この神様は性悪で、哭(な)たり恚(ふつく(怒る)むことを好んだので、多くの国の民が死に、また青山(あおやま)が枯れました。
このため父母である伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)は、
「汝(いまし)がこの国を治(し)らすなら、必ず残(そこな)ったり傷を負わせたりするであろう。
ゆえに汝は、きわめて遠い根国(ねのくに)を馭(しら)しなさい」と述べられました。
次に鳥磐櫲樟橡船(とりのいわのくすのきのふね)を生み、この船に蛭兒(ひるこ)を載(の)せて、流(なが)されました。
次に火の神の軻遇突智(かぐつち)を生(う)みましたが、このとき伊弉冉尊(いさなみのみこと)は、軻遇突智(かぐつち)のために、大事な所を焦(や)かれて終(かむさ)りました。
その終(かむさ)る前の臥(ふ)しているときに、土の神の埴山姬(はにやまひめ)と、水の神の罔象女(みつはのめ)を生(う)みました。
すると軻遇突智(かぐつち)は埴山姬(はにやまひめ)を娶(めと)って、稚産靈(わくむすひ)を生(う)みました。
その稚産靈(わくむすひ)の頭の上に、蚕(かいこ)と桑(くわ)が生(な)り、臍(へそ)の中に五穀が生れました。
(罔象と書きて美都波(みつは)と云(い)ふ)
<解説>
二つ目の一書(あるふみ)です。
ここでは日本書紀の本文と同じく、日の神と月の神がお生まれになられたあとに蛭児(ひるこ)が生まれたとしています。
その蛭児は、「三歳になっても足が立たず、それは初めに伊弉諾(いざなき)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が天御柱(あめのみはしら)を巡(めぐ)ったときに、女性神である陰神(めのかみ)が先に喜(よろこび)の言葉を発したことによる。そのために陰陽(おんみょう)の理(ことは)りに違(たが)え、蛭兒(ひるこ)が生まれたのだ」と書かれています。
陰陽(おんみょう)の理(ことわり)というと、なにやらものものしい感じがしてしまいますが、実はこれはまことに理に叶(かな)ったことです。
女性は子を産みますが、お腹の赤ちゃんは十月十日(とつきとおか)母親の胎内にあるし、生まれすぐには乳をあげるために母は赤ちゃんにつきっきりになります。
そして女性が妊娠できるのは、生理がある間だけです。
つまり女性は生涯の出産回数に制限があるわけで、この点、種を植えるだけの男性とは基本的な生理が異なります。
仮にもし、女性の側が結婚、すなわちセックスを男性に求めれば、男性は見境がありませんから、すぐにマウントします。
けれどそれによって妊娠すれば、その間、女性は食べ物を得るための活動ができませんし、子が生まれてすぐも同様の状況となりますから、妊娠期間中から、子がある程度大きくなるまでは、女性は男性の庇護下に入らなければなりません。
このときに、そもそもはじめに女性の側が求めたものであれば、男性は単に求めに応じただけですから、そこに女性や生まれた子の面倒を見るという責任が生じにくくなります。
ところが男性が求めてセックスに及び、子が生まれたならば、男性はその母体にも子にも責任が生じます。
そして、そうでなければ女性は安心して子を生むことができません。
つまりそれこそが生物学的にみても、まさに理にかなったことになるのです。
四番目に生まれたのが素戔嗚尊(すさのをのみこと)です。
この神様は性悪で、哭(な)たり恚(ふつく(怒る)むことを好んだので、多くの国の民が死に、また青山(あおやま)が枯れ、このため父母である伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)は、
「おまえがこの国を治(し)らすなら、必ず残(そこな)ったり傷を負わせたりするであろう。だからおまえは、遠い根国(ねのくに)に行きなさい」と述べられたとあります。
五番目の子は、鳥の磐櫲樟橡船(いわのくすのきのふね)です。
この船に蛭兒(ひるこ)を載(の)せて、流(なが)されたとあります。
本文ではこの船は「天の磐櫲樟橡船」と書かれています。
天と鳥の違いがありますが、いずれもクスノキで造られた磐(いわ)のように丈夫な船という意味です。
この天や鳥という表現から、UFOのような空を飛ぶ船であると解説しているものもありますが、(もしかすると本当にそうかもしれないけれど)、文字からすれば、「天の」というのは「上古の昔の」という意味ととれますし、鳥の船ならば、鳥のように二枚の帆を持つ船であったと読むこともできます。
下の図は、タンザニアでいまも使われているアウトリガー付きカヌーですが、丸木舟にアウトリガーと帆を張ると、立派に外洋航海のできる船になります。

また下図のように、カヌーに三角帆(スピンネーカー)を付けると、追い風のときに速力を増すことができます。
「鳥の磐櫲樟橡船」という以上、鳥が空を翔けるように、すばやく海を走行できる船であるとするならば、上の図のタンザニアのカヌーのようなアウトリガー付きの船に、さらにスピンネーカーを付けた、そんな船が太古の昔に用いられていたのかもしれません。

六番目に生まれたのが火の神の軻遇突智(かぐつち)です。
古事記では、イザナキが禊(みそぎ)をして三貴神(天照大御神、月読命、須佐之男命)が生まれるよりもずっと前に、イザナミが火之迦具土神(ひのかぐつちかみ)を生(う)んだと描写されていますが、この「一書(あるふみ)」では、三貴神の後に「カグツチ」が生まれたとしています。
そしてカグツチが火の神様であったために、イザナミは大事なところを焼かれて終(かむさ)られたと書かれています。
伊弉冉は、神去る前、つまり病の床に伏しているときに、土の神である埴山姬(はにやまひめ)と、水の神である罔象女(みつはのめ)を生みます。
すると軻遇突智(かぐつち)が、その埴山姬(はにやまひめ)を娶(めと)って、稚産靈(わくむすひ)を生(う)み、その稚産靈(わくむすひ)の頭の上に、蚕(かいこ)と桑(くわ)が生(な)り、臍(へそ)の中に五穀が生れたとあります。
二万年前まで、広大な内海として、静かな海でありながら魚の多い漁場となっていた曙海が、氷河期の終わりとともに水面が上がってきて、内海であった曙海は、波の荒い東シナ海へと変わって行きます。
蛭児が曙海を意味するなら、海面の上昇にともなって、多くの命も失われたことでしょう。
そして、陸の後退にともなって黄海が形成され、それまで内陸部の山岳地帯だったところが朝鮮半島へとなっていきます。
素盞嗚命は海の神であり、多くの命が失われたという記述は、もしかすると、そうした海面の上昇に伴う人々の生活圏の変化を象徴しているのかもしれません。
前回お話しましたが、磐櫲樟橡船という文字に使われている漢字を見る限り、それはたくさんの櫂(オール)の付いたガレー船のような船であったと見ることができます。
ガレー船のようなタイプの船は、内海では強力な走行性能を発揮しますが、波の大きな外洋では、オールのところから浸水してしまい、船が沈没しやすくなります。
西洋において、一世を風靡したガレー船が、その後、帆船に代わるのは、それが理由です。
そうした船に乗っていた生活が、蛭児という名に象徴される曙海の消失とともに、消えていく。
そのことを「蛭児を舟で流した」と神話的表現で記しているということは、十分にありえることといえそうです。
次に火の軻遇突智(かぐつち)が生まれます。
次いで埴山姬(はにやまひめ)と、水の神である罔象女(みつはのめ)が生まれるのですが、「埴(はに)」というのは土器に用いる粘土のことですから、埴山は、粘土のある山ということになります。
「罔象(みつは)」に使われている「罔」は、山で鳥などを捕らえるときに使う網(あみ)のことで、「象」は「かたどる」ことを意味する漢字です。
つまり、粘土を使って何かをかたどることが「埴山(はにやま)と罔象(みつは)」です。
そしてかたどった粘土は、火で焼くことで焼物(土器)になります。
火の軻遇突智(かぐつち)と埴山姬(はにやまひめ)が結婚したというのは、そういうことを述べているのでしょう。
この二人から生まれた子が稚産靈(わくむすひ)です。
「稚」は「若い」と同義で、「産靈」とは万物を生み成長させる神秘で霊妙なはたらきのことです。
土器の上に様々な物産が載せられた様子が「稚産靈(わくむすひ)の頭の上に、蚕(かいこ)と桑(くわ)が生(な)り、臍(へそ)の中に五穀が生れた」という記述になっているのであろうと思います。
さて、では一書(あるふみ)の(3)以降はどのようなことが書かれているのでしょうか。
続きはまた次回。
お読みいただき、ありがとうございました。

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