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戦後は個人主義と呼ばれ、個人の欲得ばかりがもてはやされる時代になっていますが、日本列島は個人どころか、世代を越えた大きな事業が、人々の生活のために必要な土地柄を持ちます。
私達はそうした日本という国の持つ特殊性を再度考慮して、場当たり的でない、これからの未来を担っていかなければならないのではないかと思います。

20190313 青函トンネル
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

昭和63年の今日(3月13日)、 北海道と青森を結ぶ青函トンネルが開通しました。
そしてこの年の4月10日には、岡山県と四国の香川県を結ぶ瀬戸大橋が開通します。
そしてすでに昭和17年に開通していた山口県と九州の福岡県を結ぶ関門トンネルが開通していましたから、この青函トンネルと瀬戸大橋によって、日本列島は陸路ですべてがひとつに結ばれることとなりました。
このことを称して、別名「一本列島」というのだそうです。
「いやいや北海道へ行くときは、いつも飛行機だよ」とおっしゃる方がおいでになるかもしれません。
けれど物産品などの重たい荷物を運ぶのは鉄道の仕事です。
一昨年の平成28年3月26日には新幹線も上野〜函館間が開通しました。
さらに2031年には新幹線は札幌まで伸びる予定になっています。
青函トンネルの構想は大正12(1923)年にさかのぼります。
阿部覺治という人が「大函館論」の中で、青函トンネルの構想を記しました。
そして国が青函トンネルに着手したのが、戦後間もない昭和21年のことです。
これに予算を付けるかの審議に入ったのが昭和29年。
そして建設開始が昭和36年です。
着手から着工までが23年。
工事開始から完成までが19年。
合わせて42年です。
構想からなら65年の歳月が経過しています。
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このように、大規模な土木工事というのは、時間がかかるのです。
けれども構想が生まれ、具体的な調査に入り、工事に取り掛かり、完成に至る。
江戸時代までの日本には、土木建設用の大型建設機械や重機はありません。
すべて手作業です。
大型土木となると、何世代もかかります。
だいたいひとつの世代が現役でいるのは25年といわれていますから、たいていの大型土木工事は、完成までに2〜3世代を要したといわれるゆえんです。
大型土木工事といえば、仁徳天皇陵が有名です。
大林組の試算では、1日最大2000人を投下し、延べ680万人が動員されて、完成までに15年8カ月もかかるのだそうです。
その仁徳天皇の御陵の周囲には、広大で平坦な平野が広がっています。
いまはその平野は街並みになっていますが、もともとはそこは広大な水田地帯でした。
田は水を張ります。
ですから、すべての田が平坦でなければならないのです。
自然にできる平野には凹凸があります。
これを田にするためには、すべてを平坦にしなければならない。
どれだけ大きな土木工事が行われたかということです。
つまり、何世代もかけて、土地を開梱し、水田地帯を築いているわけです。
仁徳天皇の御在位は87年であったと伝えられています。
世代でいえば、その間に3.5世代が交代していることになります。
調査し、計画し、着工し、完成する。
仁徳天皇陵を、天皇が権威を示すために自分の墳墓を築いたのだという人もいますが、私は違うと思います。
周囲に水田地帯が生まれていることを加味すれば、むしろ広大な土地の開拓に伴って発生する残土を、計画的に積み上げたものが御陵であり、その御陵に仁徳天皇ご自身が埋葬を希望されたのではないかと思います。
そうでなけば、広大で長期に及ぶ御陵と周囲の水田地帯の開発のための土木工事が再現性のある歴史として構築できないからです。
話が脱線しましたが、開かずの踏切対策としての鉄道の高架や、大きな河川への架橋、高速道路の建設等々、私達の国は、古来、長い長い歳月をかけて国土の有効な活用が図られてきました。
それらはすべて、民衆がより豊かに安全に安心して暮らせるようにするためのものです。
戦後は個人主義と呼ばれ、個人の欲得ばかりがもてはやされる時代になっていますが、日本列島は個人どころか、世代を越えた大きな事業が、人々の生活のために必要な土地柄を持ちます。
私達はそうした日本という国の持つ特殊性を再度考慮して、場当たり的でない、これからの未来を担っていかなければならないのではないかと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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