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普段はヘラヘラしていても良いのです。
本当に重大な交渉のとき、一命をなげうってでも目的を完遂できるか。
その肚を持つのが日本人であり、日本の武士です。

20190207 日本刀
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

武士が腰に大小二本の刀を差していることについて、大刀は相手を切り伏せるため、小刀は、相手を切り伏せたら自分が腹を斬るため、と申し上げてきました。
また、武士の「武」という字は、訓読みが「たける」であり、「たける」は歪んだものを竹のように真っ直ぐにすることを言うとも述べさせていただきました。
そして身分の高い武士は「知行(ちぎょう)」をいただきますが、「知行」とは「シラス(知)を行う」ことを言い、シラスとは神々と直接つながる天子様(天皇)が、すべての領土領民を「おほみたから」とし、その「おほみたから」が豊かに安全に安心して暮らせるために「たける(武)」を行う「さむらい(士)」が武士である、とも書かせていただきました。
さらに一歩踏み込んで申し上げると、武士が何事かの交渉を行うときというのは、常に「刀にかけて」という姿勢で臨んだのだということを、今日は書かせていただきたいと思います。
以下は、倉山満先生が、先般の「日本史検定講座」の講義で述べられていたことです。
要約します。
「第一次世界大戦終結処理を行う
 パリ講和会議に出席した牧野伸顕全権大使は
 会議の席上『人種の平等』を国際連盟憲章に
 謳(うた)うべしと動議した。
 採決は賛成多数であったが、
 議長のウイルソン(米大統領)は、
 『このような大事な議論は
  全会一致でなければ認められない』
 として、人種平等案を否決した。」
ここまでは、皆様もよくご存知のことであろうと思います。
では、
「もし、このときの交渉役が、
 牧野伸顕でなく、
 西郷隆盛が行っていたら
 結果はどのようになっていたでしょうか」
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皆様も是非考えていただきたいと思います。
歴史にIFは禁物というのは、戦後にGHQが流したプロパガンタです。
ケーススタディという言葉がありますが、歴史はケーススタディとして、歴史上の様々な場面に自分自身を重ねて、自分ならどのように判断し、行動するかを学ぶのが、本来の歴史教育です。
歴史の研究にはIFは禁物です。
けれど歴史の学習は、そのIFを重ねることで、判断力や洞察力を養うものです。
さて、みなさんは、どのようにお考えでしょうか。
ではもうひとつ。
この交渉役が、みなさんなら、どのようにしたでしょうか。
当時の世界は、国家といえるのは欧米列強と、東洋では日本だけです。
あとは、植民地(コロニー)か領地(テリトリー)です。
日本は独立した唯一の有色人種国家であり、世界では有色人種であるというだけで人権を否定され、有色人種は人ではないとされ、多くの人々がまるで牛や豚のように屠殺されていました。
そして世界中の有色人種が、米国黒人も含めて、このパリ講和会議における日本の「人種平等」の動議に期待を寄せていました。
それは、自由を求める人間の生の声でもありました。
つまりパリ講和会議における日本の動議は、世界中に甚大な影響をもたらすものでした。
一方、植民地経営をもって国の富とする欧米列強にとっては、人種平等など絶対に認めることができないものでした。
人種平等が国際連盟憲章に謳われれば、欧米列強のそれぞれの国家を左右する大金持ちたちは、その大金持ちとしての権益をすべて否定されるものとなります。
ですから彼らにとっては人種平等など、決して受け入れることのできないものです。
そうした背景のもと、1919年4月11日、国際連盟委員会最終会合において、牧野全権は強硬に採決を求め、
議長のウイルソン米大統領を除く16カ国で採決が行われ、11カ国が賛成、反対は英米ポーランド、ブラジル、ルーマニアの5カ国となりました。
そしてこのとき、ウィルソンは
「全会一致でないため提案は不成立である」と言い、
牧野伸顕は
「会議の問題においては多数決で決定されたことがあった」と反発すると、
ウィルソンが、
「本件のような重大な問題については
 これまでも全会一致、
 少なくとも反対者ゼロの状態で
 採決されてきた」
と回答し、牧野もこれに同意して、本件は否決となった、というのが実際に起きた歴史の流れです。
「もし、この交渉が
 牧野伸顕ではなく
 西郷隆盛であったのなら、
 ウイルソンはその場で
 首と胴が離れていたであろう」
というものです。
これが倉山先生の講義です。
講義終了後倉山先生は「近代史を調べていくと、あまりに情けなくて」とおっしゃっていました。
私もそのように思います。
古来、日本の武士道は、命がけで責任をまっとうしようとするものとされてきました。
理が日本にあり、欲得が相手方にあり、ウイルソンの発言は明らかな横車です。
それを認めて引き下がるくらいなら、はじめから交渉などしないほうが良い。
言ってみただけというのなら、無責任にも程がある。
背後には、植民地支配され、人権を剥奪された何十億もの人の命があるのです。
その交渉をするなら、言いがかりをつけて事態を捻じ曲げようとする相手方を、一刀両断のもと斬り捨てる。
それこそが、古来言われる「たける」日本の心です。
現代の感覚では、過激と思われるかもしれません。
しかし、武士はそのために二本の刀を腰に差したのです。
日本式の交渉というものは、常に命がけの本気なのです。
普段は、冗談を言い合って、ニコニコしていたとしても、いざというときには覚悟を決めて相手を斬り捨てる。
もちろん人を斬れば、自分もその責任をとって腹を切らなければなりません。
斬られる側は、一瞬で首と胴が離れますが、腹を斬る側は、腹を斬ってもすぐには死ねません。
半日以上、痛さと苦痛を味わいながら、死ぬことになります。
それでも斬る。
それが重大な交渉をすることを仰せつかった武士の覚悟というものです。
パリ講和会議で、軟弱を見せた日本は、その2年後には日英同盟を打ち切られ、一方的な軍縮を要求され、欧米列強の富を奪う東洋の悪の枢軸国であり敵国とみなされ、その後20年かけて追い詰められ、包囲され、内部にスパイを送り込まれて、大東亜の戦いで大敗北を喫して、国家解体にまで追い込まれるという惨状となりました。
このために、日本をはじめ世界の国々で、いったいどれだけの有色人種の命が犠牲になったのか。
もしかすると、それは数億人規模の命であったのかもしれません。
その数億の貴重な命と、たったひとりの命(相手と自分の2つの命)と、どちらが大事なものか。
そうした洞察を働かせて行動するのが、日本の武士の道です。
Chinaでは、「皇帝の命令は絶対」として、皇帝に命令されたらその場で自害するのが武人の道とされていますが、そうしたものは、我が国の武士道とは、まったく道の異なるものです。
我が国では、殿様の命令であっても、理不尽なものなら逆に殿様を座敷牢に押し込め、場合によっては大名職を廃絶して斬り捨てます。
藩主は、天子様から領土領民を預かった将軍から、知行地(シラスを行う土地)の藩民を預かっているのです。
何事も藩民が主、自分を持ってはいけないから、常に「世(よ)は(または余は)」という言葉を使います。
勝手な自己都合を優先するなら、斬り捨てる。
それが日本の「さむらいの道」です。
仮にもし、パリ講和会議の席上で、日本の全権がウイルソンをその場で斬り殺していたら、その後の世界はどのようになっていたでしょうか。
当然のことながら、日米関係には大きな緊張が走ったことでしょう。
けれど日本が、なぜウイルソンを斬ったかを明らかにすることで、米国政府も、これを問題にしにくい。
米国世論が許さないからです。
これを弾圧しようとすれば、米国内のみならず、全世界の有色人種がたちあがったかもしれません。
おそらくその後の世界の歴史は、まったく異なるものになっていたことでしょう。
「日本人は、日頃はヘラヘラしているけれど、いざ本気で怒ると特攻までして攻撃してくる」とは、世界に広く知られたことです。
当然です。
その肚の座っている者が日本人であり、日本の武士だからです。
さりとて刀は、そうそう簡単に抜くものではありません。
抜いたときには、相手を斬り伏せ、自分もまた腹を斬らねばならないからです。
 *
歴史は出来事の事実を学んで「IF」を考える。
それが歴史を学ぶということです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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