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三大神勅というのは『日本書紀』の天孫降臨の段で、天照大御神が、孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の地上降臨に際して詔(の)らされたとされる次の3つの御神勅(三大神勅)のことをいいます。
1 天壌無窮の神勅(てんじようむきゅうのしんちよく)
2 宝鏡奉斎の神勅(ほうきようほうさいのしんちよく)
3 斎庭稲穂の神勅(ゆにはいなほのしんちよく)
順にその内容を学んでみたいと思います。

20181210 天壌無窮の神
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)

日本人として是非知っておかなければならないことのひとつに、
「三大神勅(さんだいしんちょく)」があります。
三大神勅というのは『日本書紀』の天孫降臨の段で、天照大御神が、孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の地上降臨に際して詔(の)らされたとされる次の3つの御神勅(三大神勅)のことをいいます。
1 天壌無窮の神勅(てんじようむきゅうのしんちよく)
2 宝鏡奉斎の神勅(ほうきようほうさいのしんちよく)
3 斎庭稲穂の神勅(ゆにはいなほのしんちよく)
順にその内容を学んでみたいと思います。
ちなみに、この3つの御神勅は、日本書紀の中で本編と離れて「一書曰(あるふみにいわく)」として、他の文献からの引用として紹介されているものです。
この時代は、漢字を我が国の標準文字として採用していこうという運動が行われていた時期にあたり、そこで、過去に様々な形で伝承されてきたものを、あらためてまる40年近い歳月をかけて漢字で書かれた文献として著したものが『日本書紀』です。
その日本書紀が「一書曰」と書いているのですが、「書」という字の上の「聿」の部分が、手に筆を持っている象形、下の部分が焚き火の象形です。
つまり「書」という漢字は、火を焚くと燃えてなくなってしまうものに、筆で何かを書きつけることの象形文字であるわけです。
従って「一書曰」とあれば、それは口承(口伝え)ではなく、何らかの形で文献として書かれたもの、を意味します。
ということは、日本書紀の前に書かれたものがあった、わけです。
現時点で、記紀よりも以前に、文字で書かれた文書は「あったかもしれないけれど現存しない」と言われています。
個人的には、神代文字で書かれた文書が、これは実はいまもちゃんと伝承されている、と思っていますが、その話は別な話。
いずれにしても、日本書紀は、天孫降臨のところまでの物語のあらましを本編として紹介したあとに、日本書紀よりも古い時代に書かれた古史古伝が、三大神勅を紹介しているとして、あらためてその物語を紹介しています。
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はじめに三大神勅を要約します。
次いで、日本書紀の原文に基づいて、少し詳しく御神勅を学びます。
<三大神勅のまとめ>
1 天壌無窮の神勅(てんじようむきゅうのしんちよく)
皇孫がシラスことによって、瑞穂の国は天地とともに永遠に栄えることを示した御神勅。
2 宝鏡奉斎の神勅(ほうきようほうさいのしんちよく)
八咫の鏡を御神鏡にしなさい。
3 斎庭稲穂の神勅(ゆにはいなほのしんちよく)
我が国で育てられる稲は天照大御神から授かった稲穂。
私たちは、その稲から成るお米を日々いただくことで神の民の一員となる。
────────────
1 天壌無窮の神勅
 (てんじようむきゅうのしんちよく)
────────────
<原文>
 葦原千五百秋之瑞穗国
 是吾子孫可王之地也。
 宜爾皇孫、就而治焉。
 行矣、
 寶祚之隆、當興天壤無窮者矣。

<読み下し文>
 豊葦原の千五百秋之瑞穂の国は、
 是れ吾が子孫の王たる可き地なり。
 宜しく爾皇孫就きて治(しら)せ。
 行牟、
 宝祚の隆えまさむこと、
 当に天壌と無窮かるべし。
 とよあしはらのちいほあきのみずほのくには、
 これあがうみのこのきみたるべきくになり。
 よろしくいましすめみまゆきてしらせ。
 さきくませ、
 あまひつぎのさかえまさむこと、
 まさにあめつちときはまりなかるべし。

<現代語訳>
 葦の原の広がる豊かな瑞穂の国は、
 わが子孫が王となる地である。
 よろしく我が孫よ、行って治(しら)しめなさい。
 さあ、お行きなさい。
 宝のように幸いを得て隆(さか)えること
 まさに天地と共に永遠となりましょう。

<解説>
天孫降臨の意義を明らかにした神勅です。
「天照大御神の直系のご子孫が天皇の地位にあり、地上の中つ国をシラスことにより、その地上の国は天地が未来永劫続くのと同様、未来永劫栄えます」という意味です。
従って、天壌無窮の神勅とは、天孫の皇位が続く限り、地上が栄えるということです。
では、「栄える(原文:宝祚)」とは、誰が栄えるのでしょうか。
その答えは、そこに住む人々、つまり民衆のことです。
最高権威である天皇が治(しら)すということは、民を「おほみたから」とするということです。
そして民は、天皇の「おほみたから」という地位を得ることによって、政治権力者からの自由を手にすることになります。
だから民が「宝のように幸いを得て、天地と共に永遠に隆(さか)える」のです。
────────────
2 宝鏡奉斎の神勅
 (ほうきようほうさいのしんちよく)
────────────
<原文>
 吾兒、
 視此宝鏡、
 当猶視吾。
 可興同床共殿、
 以為齋鏡

<読み下し文>
 吾が兒(みこ)、
 此の宝鏡を視まさむこと、
 当に吾れを視るがごとくすべし。
 興に床を同じくし、殿を共にして、
 斎鏡(いはいのかかみ)と為す可し。
 あがみこ、
 このかがみをみまさむこと、
 まさにあれをみるがごとくすべし。
 ともにゆかをおなじくし、とのをともにして、
 いはひのかがみとなすべし。

<現代語訳>
 わが子よ、この宝鏡を視(み)ることは
 まさに私(天照大御神)を見るのと同じにしなさい。
 お前の住まいと同じ床に安置し、お前の住む宮殿に安置し、
 祭祀をなすときの神鏡にしなさい。

<解説>
このときの宝鏡が「八尺鏡(やたのかがみ)」で、これは天照大御神が天の岩戸にお隠れになられた際に、その天照大御神にご出現いただくために、高天原の八百万の神々が天の安河に集まって川上の堅石を金敷にして、金山の鉄を用いて作らせた鏡です。
その鏡を未来永劫ご安置し、その鏡を見るときは天照大御神を見るのと同じにしなさいというのが宝鏡奉斎の神勅です。
鏡は「かがみ」ですが、「かがみ」から「が(我)」を取ったら「かみ」です。
つまり人の上に立つ者は、我を持ってはならないという戒めでもあります。
そしてこの宝鏡奉斎の神勅があるがゆえに、天皇は常に「無」であり、「無」であるがゆえに億兆と心を通じることができるとされてきたのです。
これが日本と日本人の基礎となる形です。
ちなみに、ここで天照大御神は、「吾(あ)が兒(みこ)」と呼びかけています。
この「あ」は、『ねずさんと語る古事記 壱』にも書きましたが、単純な一人称ではなくて、もっと形而上学的な意味を持ちます。
いわば、「天照大御神を通じてあらゆる神々と通じる」という意味が込められた「あ」となっています。
────────────
3 斎庭稲穂の神勅
 (ゆにはいなほのしんちよく)
────────────
<原文>
 以吾高天原所御齋庭之穂
 亦当御於吾兒

<読み下し文>
 吾が高天原に所御す斎庭の穂を以て
 亦吾が兒に御せまつるべし。
 あがたかまのはらにきこしめすゆにはのほをもて、
 またあがみこにまかせまつるべし。

<現代語訳>
 吾が高天原に作る神聖な田の稲穂を、
 わが子に授けましょう。

<解説>
この斎庭稲穂の神勅によって、日本国中で栽培される稲は、ことごとく「天照大御神からの授かりもの」という位置づけになります。
民は、その稲を栽培するわけです。
そして私たちは、その稲から成るお米を日々いただきます。
「戸喫(へぐい)」という言葉がありますが、同じものをいただくということは、同じ仲間となる、共同体の一員となって心を通じ合うという意味があります。
神社などで、参拝のあとに「直会(なおらい)」といって、奉納したお米や作物などを、みんなで一緒にいただきますが、そうすることによって神様と心を通じあうことになります。
ですからお米をいただくということは、天照大御神に通じるやまとひとの一員となるということでもあります。
そしてこのご神勅によって、全国でお米を栽培する民は、高天原の稲を栽培する人々という位置づけになります。
だからこそ、民は「おほみたから」という位置づけになります。
近年では、お百姓は収奪されていたなどという、とんでも説がまかりとおっていますが、国家としての農家への認識は、斎庭の稲穂を栽培するという大事を行う宝であったのです。
※この記事は2017年3月の記事のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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