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よく、どんな本を読んでいるのですかと聞かれるのですが、乱読です(笑)。
特に特定の分野を決めて読んでいるわけではありません。
サラリーマンの頃は、月に最低でも20冊は読んでいたのですが、最近は、読書の数は激減しました。
それでも、何かを得ることができる本に出会うと、やはりそこには喜びがあるものです。
そこで、これから月末には毎月、その月のまとめとして、当月に読ませていただいた本のうち、感動のあった本を、ご紹介していこうと思います。
今月は三冊です。
1 『人を動かすリーダーの条件』岩渕秀樹著、KKロングセラーズ
2 『群青の墓標』横家伸一著、文芸社
3 『自由と愛国のマーチ』山口采希著、かざひの文庫
***
1『人を動かすリーダーの条件』
岩渕秀樹著、KKロングセラーズ
海上自衛隊の海将補を勤められた岩渕秀樹さんのご著書です。
岩渕さんは、護衛艦隊旗艦艦長やイージス艦などの指揮官を勤められた経験を活かし、定年退官後は企業などにおける人材教育のための会社の役員として、あるいは子供の未来を拓く塾の運営などをされながら、活躍されている人です。
その岩渕さんは、昨今の日本の民間企業の組織の荒廃ぶりに警鐘を発します。
たとえば、日本の企業で、部下が定時になると、
「お先に失礼します」
と言ってさっさと帰る。
もしこれが米国の会社であれば、その部下は、
「I’ll go back first ! 」
とボスに言うのでしょうか。
そのように言えば、ボスは間違いなく、
「明日から仕事に来なくて良い」
と言います。
上司から業務を与えられているのです。
仕事が終われば、
「本日の業務はここまで終わりました。
これにて退社してよろしいでしょうか」
と、その日の業務報告を上司に行い、そのうえで上司から
「おつかれさん」と許可を得て、
「ありがとうございます。
それではお先に失礼します」
と挨拶して帰る。
その一連の流れが確立されて、はじめて、組織が機能していくということを書いておいでになります。
そうでなければ、ただの時間給奴隷です。
時間になった。帰る。「お先に〜」
昨今の日本では、よくみかける光景です。
けれど、仕事はどこに行ったのでしょうか?

【倭塾】(江東区文化センター)
〒135-0016 東京都江東区東陽4丁目11−3
第35回 2016/12/24(土)13:30〜16:30 第4/5研修室
第36回 2017/1/14(土)13:30〜16:30 第4/5研修室
第37回 2017/2/26(日)13:30〜16:30 第4/5研修室
【百人一首塾】(江東区文化センター)
〒135-0016 東京都江東区東陽4丁目11−3
第 9回 2016/11/24(木)18:30〜20:30 第三研修室
第10回 2016/12/8(木)18:30〜20:30 第三研修室
第11回 2017/1/19(木)18:30〜20:30 第三研修室
第12回 2017/2/ 9(木)18:30〜20:30 第三研修室
そういう基本姿勢がとれない部下について、これはこの本に書いて有ることではありませんが、江戸時代の基礎教育の要となった『童子教』は、厳しく戒めています。
畜悪弟子者 悪しき弟子を畜(やしな)へば
師弟堕地獄 師弟地獄に堕(を)ちる
組織は、チームです。
そのチームに異物を認めれば、チームは破壊します。
全員で一丸となってバレーボールをやっているのに、
「私はサッカーがしたいの!」
と言い張る者がいれば、排除するしかないのです。
それが組織です。
この本にあったことですが、昨今の日本の企業では、入社同期を「ライバル」として競争させる間違いも指摘されていました。
本来、同期は団結を図るものであって、張り合うものではありません。
組織において、どっちが上かは、指揮命令の上下のラインにもとづきますけれど、同時に良い意味での横の連帯が図られていなければ、互いの意思の疎通を欠き、これは組織に重大な危険を招くことになりかねません。
ここから得た感想ですが、たとえば日韓関係について、たとえばスポーツなどにおいてさえ、日本のメディアは日韓を「永遠のライバル」などと表現したりします。
もうそこから間違っているのです。
そもそもライバルなんて日本語は、かつては存在しなかったし、日本語にないから、仕方がないから、「Rival」をそのままカタカナ外来語として使っているのです。
だからいつも日本は、親善試合をもちかけます。
ちなみに、明治以来の官僚用語で、親善というのは同盟国に、友好は敵対国に対して使う言葉です。
だから日中は、いつも日中友好です。
話を戻します。
岩渕さんは、旧日本海軍以来の伝統の日本的組織にある、仲間意識、連帯責任を育むことを中心に、本当の意味で「人を育てる」とは、あるいは「役立つ人材」とは何かを、この本の中で、述べておいでになります。
私など、サラリーマン時代は「組織の異端児」みたいに言われていたので、この本を読んで、いまさらながら現職時代の自分の至らなさを痛感させられました。
若い世代、現職世代の方々に、経営者、管理職、平社員の別なく、是非、お読みいただきたい本だと思います。
2『群青の墓標』
横家伸一著、文芸社
最後の沖縄県官撰知事であった島田叡(しまだ あきら)を主人公にした小説です。
横家さんのお話では、この本を書くにあたって、ねずブロの
「沖縄の二人の知事・・・泉守紀と島田叡」
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-809.html
「命をかけて守る 荒井退造」
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-1069.html
を、何度も読み返していただいたのだそうです。
拙記事が、こうして素晴らしい著者と出会い、小説として新たな展開を見せてくれたことは、本当にありがたいことと思います。
また、そのことを隠そうともせずに、私にお話くださった横家さんの度量の広さにも感動しました。
そうでないある人は、名刺交換をした際に、逃げるようにして去られましたから(笑)
さて、島田知事は死ぬとわかっていて沖縄県知事を引き受けた人です。
そして最後の最期まで沖縄県民の命を守ろうと、牛島中将らとともに在られた人です。
軍人は最後の最期まで、銃で戦います。
島田知事は、軍人ではありませんから、銃は持ちません。
けれど彼が、どこまでも県民の命を守るために行った行動は、まさに戦いそのものといえます。
荒井警察部長もまた、最期の瞬間まで、知事らとともに、ひとりでも多くの沖縄県民の命を守ろうと、辛い仕事を必死になって遂行された、素晴らしい警察部長です。
そしてこのお二人が、ここで極限に生きる人として、その雄姿がいきいきと活写されています。
連日猛爆に晒され、刀折れ、矢尽き、食べるものも水さえもない。
篭った塹壕の中は、屍体と血と糞尿の匂いが充満している。
痛い、苦しいといううめき声が後を絶たない。
死んだほうが、よっぽど楽。
誰もが、そうとしか思えない過酷な環境の中で、最後まで「知事と行動をともにしたい」と願い出た嘉数秘書官と警固の巡査部長に、島田は次のように言います。
「君たちはまだ若い。
戦争が終わった沖縄のために
もう一花も二花もさかさなあかんのや。
決して死ぬんじゃない。
強く生き抜くんや」
島田知事は、関西弁です。沖縄の人じゃない。
けれど島田知事は、同じ日本人として、同じ同胞として、責任者として、島田知事は、最期の瞬間まで、地元の沖縄県民の命を最優先に生き抜きました。
昭和20年6月25日、荒井退造警察部長の命がもう長くないと悟った島田知事は、荒井部長に、せめて死ぬときくらいうまい空気を吸わせてやろうと、我が身の危険を顧みず、荒井を背負って軍医部壕を出ます。
もう誰も止める者もいません。
荒井を背負い、小さな浜辺に降り立った島田は、荒井を横たわらせ、波の音をきかせました。
「荒井君、打ち寄せる波の音が聞こえるか。
きれいな満月が見えるやろ」
もうすぐ筑波山が見える。
君が生まれた清原村(栃木県)に帰れるでえ」
島田の声が聞こえたのが、荒井の目尻から一筋の涙がこぼれる。
荒井は、前知事や内政部長のように、戦争になる前に逃げ出す機会もあったろうに、馬鹿正直に仕事に打ち込んだ結果がこの始末です。
荒井自身は納得ずくでも、家族には諦めきれないものが残る。
けれど、荒井の家族だからこそ、殉職した夫を、父を誇りに思うことだろう。
「荒井君、長いことご苦労さんやったなあ。
ありがとう。
まっすぐ、故郷の栃木に帰るんやで」
島田知事に、当時の安倍源基内務大臣は、島田知事を
「其ノ志、其ノ行動、真ニ官吏ノ亀鑑ト謂フベシ」
と讃え、我が国行政史上初となる内務大臣賞詞と顕功賞を贈りました。
沖縄戦がどのようなものであったのか。
そしてその激戦の中で、人々がどのように生きたのか。
この本は、特に、若い世代の方、あるいは沖縄問題に関心のある方にお読みいただきたい本です。
3『自由と愛国のマーチ』
山口采希著、かざひの文庫
山口采希さんは、教育勅語や五箇条の御誓文などを曲にして歌っている女性歌手です。
この本は、その山口采希さんの初のエッセイ本です。
何が感動したって、この采希さんの、語り口です。
たとえば、
「私たちの国の歩みを知るということは、
難しい勉強じゃなくて、
迷子になりそうな時の
心の地図を得るということ」
歴史とは何か、歴史を学ぶとは等々、むつかしい理論で語られる方は多いですけれど、山口さんのすごいところは、そこに山口さんなりの解釈を入れて、きわめてオリジナルに、わかりやすく、平易な言葉で、誰にもなっとくできるように、明るく笑顔で、語られるという点です。
これはもう、天賦の才としか言いようがないと思います。
是非、ご一読を。
お子さんや、お孫さんにも、気楽に読んでいただける本として、お勧めです。
お読みいただき、ありがとうございました。

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