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20160710 聖徳太子

十七条の憲法はなぜ十七条なのか。
このことに興味を持つ人は多いらしく、yahoo知恵袋などにも設問と答えが並んでいます。
いわく、
◯8と9と17は、縁起が良い数字だから。
(なぜ縁起が良いのかは不明)
◯七緒(ななを)が「たくさんの紐」で、これに人握りを意味する「十」を加えた。
(だから何のために?、目的は何?)
◯十七が、割り切れない素数だから。
(素数は他にもありますが。。。)
◯十七は、中国で神聖な数とされていたから。
(なぜ神聖なの?具体的に何経でそのように説かれているの?)
要するにいずれも、これという決め手に欠けた解説しかしていません。
17条であるということは、これが日本初の憲法である以上、必ずそこに誰もが納得する具体的な根拠がなければならないのです。
ではその理由は何だったのでしょうか。
実は答えは極めてシンプルであり、誰の眼にも明らかです。
そしてかつてこれは、考えるまでもない常識でした。
記紀に書かれた創世の神々の数が、17柱なのです。
ですからそれにちなんで17条の憲法にしています。
そしてその17条は、それぞれ、創世の神々と相対しています。
十七条憲法が制定されたのは西暦604年です。
それまでのChinaは、小国が分立して覇権を競い合う状態が400年以上も続いています。
彼らが彼ら同士で争っているうちは、日本にとってなんの脅威もないのです。
ところが589年に、隋という巨大な軍事帝国ができあがりました。
そして隋は、次々と周辺国を脅かし始めていました。
そうしたなかにあって、我が国がひとつの国としてまとまり、独立自尊を保とうとして604年に公布されたのが、この十七条憲法です。
一方、記紀が編纂されたのは、そのおよそ100年後ですが、あたりまえのはなしですけれど、創世の神々は、記紀によって想造されたのではありません。
もともと上古の昔から語り継がれ、神代文字で書き記されてきたものを、あらためて漢字を使って書き表したのが記紀です。
古事記序文にそのように書いてあります。
その神話の冒頭には、天之御中主神に始まる17柱の神々が記されています。
そして十七条憲法は、各条項の意味も、17という数も、そのまま創世の神々に対応しています。


創世の神々は、まず特別な天の神様として5柱の神々がおわします。
初代 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
二代 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
三代 神産巣日神(かみむすひのかみ)
四代 宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましかしかひひこちのかみ)
五代 天之常立神(あめのとこたちのかみ)
天之御中主神は、文字通り、天空のど真ん中の神様です。
ありとあらゆるものの中心です。
そして十七条憲法の第一条は、「以和為貴(和を持って貴しとなす)」です。
すべての中心に、和を置きなさいというのです。
意味はしっかり対応しています。
二代目の神様は、高御産巣日神です。
高御産巣日神は、後に高木神となって天照大御神を輔弼される神様です。
政治上の上にある権威そのものの神様です。
十七条憲法の第二条は「篤敬三寳(あつく三宝を敬え)」です。
三宝とは仏と法と僧のことです。
政治よりも、政治の根幹となる神や仏、法理、それを護る者を大事にしなさいということです。
政治は、利害の衝突を生みます。
衝突を回避して、よりよい方向に持っていくことができるのは、政治以前に共有する文化的価値観があるからです。
この根幹がブレていたり、なかったりしたら、政治は対立しか生まなくなり、結果として戦乱を招き、人も国家も不幸を招きます。
利害の衝突や政治的対立よりも以前に、まずは価値観を大切にしなさいということです。
しかもここで「篤く仏法僧を敬え」と述べています。
日本にはもともと縄文以来の神道がありますが、蘇我氏と物部氏の争いにあるように、その神道と渡来仏教との諍いも当初は現実にあったのです。
ところが、この第二条では、争うのではなく「敬っちゃえ」としているわけです。
しかもその心は、高御産巣日神です。
お名前にあきらかなように、争うのではなく、高い次元で全てをむすんでしまわれるという神様です。
争うのではなく、結んでしまう。
その心が、この第二条になっています。
三代目の神様は神産巣日神です。
読んで字のごとく、日の神様との産巣の神様です。
第三条は「承詔必謹(みことのりを受けては必ずつつしめ)」です。
たとえどのような意見の違いがあろうと、ひとたび詔(みことのり)が発せられたら、それは神からのお言葉であるのだから、たとえどのような事情、意見、見解、対立があろうと、謹んでこれをお受けしなければならないというのが「承詔必謹」です。
日の神様というのは、天照大御神です。
その天照大御神の直系のご子孫であり、神々と人の最高の接点であられるのが天皇です。
ですから天皇のお言葉は、天照大御神様のお言葉です。
ひとたび日の神様との産巣をお勤めされる天皇から詔が発せられたら、謹しまなければならないということです。
四代目の神様は宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましあしかひひこちのかみ)です。
たいへん、難しい漢字が並んでいますが、「宇摩志」は立派な、「阿斯訶備」は葦の芽、「比古」は男性、「遅」は泥を表わします。
泥の中から生き生きと延びる葦の芽のようなたくましく強い生命力の神様とされています。
第四条は「以禮為本(うやまうことを根本とせよ)」です。
ここは「群卿百寮。以礼為本(群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)、礼をもって本(もと)とせよ)」と書かれています。
どんな人にも、人であれば間違いを犯すこともあります。
失敗は常についてまわります。
けれど一度の失敗で、都度クビをはねることが良いことにはなりません。
この世にそもそも完全無欠などないのです。
それに人は成長するものです。
特に男性は行動的な分、およそ誰もが若いころから失敗続きです。
ですからだいたいどこのお宅でも、結婚当初は、旦那は「俺は亭主関白でいるぞ」と威張っているし、新妻も「そんなアナタが好き♡」なんて、のんきなことをやっていますが、だんだん歳を重ねるに従って、男性は外での失敗を、都度、女房に頭を下げて許しを乞うことになり、中高年になる頃には、すっかり女房に頭が上がらなくなっているというのが、世の常です。
それで良いのです。
けれど、数限りない失敗を重ねながら、男性は成長していきます。
「男子三日会わずば刮目して見るべし」といいます。
これはもともとは三国志演義にある「士別れて三日なれば刮目して相待すべし」から取られて慣用句化した言葉ですが、男は成長するのです。
先の大戦の頃は、戦闘機のドッグ・ファイトが行われた時代でした。
その中には、敵戦闘機を撃墜した数から、世界の撃墜王と呼ばれる人が誕生しました。
第二次世界大戦における1位はドイツのエーリヒ・ハルトマンで352機、2位がドイツのゲルハルト・バルクホルンで301機と続き、15位までをドイツ軍が独占しています。
そしてようやく16位の202機で日本海軍の岩本徹三中尉が登場します。
ところが一点大きな違いがあります。
ドイツ軍は、撃墜されたパイロットはパラシュートで脱出し、飛行機を乗り換えて何度でもまた出撃したのです。
これに対し日本軍は、基本、その脱出がありません。
つまり、
ドイツ軍の撃墜数は、じゃんけんで言ったら、勝ったり負けたりしながらも、とにかく勝った数であり、
日本軍の撃墜数は、じゃんけんなら、勝ち続けた数、つまり連勝記録なのです。
どちらが、可能性として国家にとって有利かといえば、答えは明らかだと思います。
人は、失敗を重ねることで成長するのです。
だからこそ、一度の失敗をあげつらって地位ある人の足をひっぱるのではなく、「以礼為本(礼をもって本(もと)とせよ)」というのです。
お一柱ごとの神々と、十七条憲法のすべてを対比して述べますと長くなりますので、以降は割愛します。
全部の突合については、今度出版する『ねずさんの日本の心で読み解く古事記』で明らかにします。
ともあれ、神代の昔から、日本人は高い文化性を持ち、その高い文化性を国のカタチにまで高めてきました。
そしてそのことによって、日本人は世界に類例のないほどの高い民度を保持した国を築いてきたのです。
私たちは、そんな日本を、いま、あらためて取り戻さなければならないときに来ていると思います。
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