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西洋では、歴史のことを「ヒストリー」と言います。
この言葉は紀元前5世紀の古代ギリシャのヘロドトスが著した歴史書『ヒストリア』に由来します。
ヒストリアというのは、直訳すれば「知っていること」もしくは「私がヒアリングして知ったこと」という意味です。それ自体は「歴史」という意味ではありません。
ところが事実上、これが西洋における最古の「歴史書」となり、これがもとになって西欧における歴史観が形成されました。
歴史は「人々が共有すべき価値観の源泉」です。
つまり西欧における価値観の源泉が、ヘロドトスの『ヒストリア』です。
では『ヒストリア』に何が書かれているかと言うと、
「ギリシャの国々が互いに奪い合ったり戦争しあったりしていたときに、東洋からペルシャの大軍がやって来て、次々とギリシャの小国が滅ぼされたが、最後はみんなで協力してやっつけた。めでたし、めでたし」という物語です。
この文のギリシャを「地球」に、東洋を「火星」に、ペルシャを「火星人」に置き換えると、H・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』になります。
「地球では各国が互いに対立し、戦争に明け暮れていた。そこに強大な軍事力を持つ火星人が攻めて来た。あわや人類滅亡となりかけたとき、勇者があらわれ、みんなで協力して火星人をやっつけた」
『宇宙戦争』は、トム・クルーズ主演で以前、映画化もされていますから、ご存知の方も多いかと思います。
さらにこれを「西欧諸国」、「日本」と置き換えると、
「世界では西欧諸国が互いに植民地を奪い合ったり戦争しあったりしていたときに、東洋から日本の大軍がやって来て、次々と西洋諸国の植民地が滅ぼされた。けれども最後はみんなで連合国を組織して強大な日本をやっつけた。めでたしめでたし」
となり、これが現在の国連秩序となっています。
つまり日本は、ヒストリアにおけるペルシャであり、宇宙戦争における火星人と規程されているわけです。

ですから日本が何を主張しようが、どこまでも日本は人類共通の敵です。
映画でも、文化でも、小説でも、ゲームでも、ナチスドイツと日本軍は、どんなに悪逆非道に描いても、どこからも抗議されることはありません。
日本やドイツからさえも来ない。
なにせ、日本やドイツ国内にさえ、自国を悪逆非道国と信じる者たちがいるくらいです。
このように、「協同するために常に共通の敵を必要とする」という思想は、「恐怖による総和」です。
「恐怖」がなければ、まとまることができず、「恐怖」を煽らなければ、諸国がまとまることができないのです。
こうした例は、ヨーロッパやアメリカの歴史が証明しています。
冒頭にある古代のペルシャや十字軍の遠征、中世の魔女狩り、近世の奴隷狩り、近代の植民地支配や第一次、第二次の世界大戦、現代の戦争、いずれも恐怖の総和にもとづいています。
このような次第ですから、国連(United Nations)も世界の平和のためにできた機構ではありません。
もともと第二次世界大戦を戦った植民地支配国が、みずからの支配する植民地を引っ張りこんで、戦後に結成した連合です。
実は、あとづけの連合国(United Nations)であって、あと付けの戦争正当化のための組織なのです。
あと付けですから、国際間の紛争は、「まずは話し合いましょう」が建前ですが、それはあと付けで連合国に含んだ国に関してのことで、安全保障理事国については、先に武力行使をしても、国連(United Nations)はこれに苦情を申し立てることはできません。
国連は、ただ承認し、その横暴に協力するだけです。
これに対して、日本的和は「共通の敵」どころか「恐怖」さえも必要としません。
「共通の敵への恐怖」があるから、みんなが協同するのではなくて、民衆こそが「たから」というのが日本的価値観です。
つまり「共通の敵がいるからまとまる」のではなくて、
まず「たから」であるみんながまとまることに価値があって、その価値を守るために戦う」というのが、日本的価値観です。
順序が西欧とは逆、実は国連秩序とも真逆なのです。
ではなぜ日本人が「まとまる」ことを大切にするかといえば、誰かが利得を独占するためではなくて、みんながともに安全に安心して豊かに暮らせるためです。
恐怖からではなく、和に根本の価値を置いているのです。
それが「和をもって貴しとなす」です。
価値観の共有を根本にする日本。
恐怖感の共有を根本にする世界。
人類社会に真の平和を築けるのは、そのどちらなのでしょうか。
※この記事は2015年1月の記事のリニューアルです。

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