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清少納言

「春はあけぼの」ときけば、清少納言ですが、彼女の書いたこの「枕草子(まくらのそうし)」が書き上がったのが、西暦1010年頃のこととされています。
ちょうど、千年ほど前のことです。
戦後、日本人はだいぶ変質してきているとはいいますが、では、千年後の日本人は?と想像してみると、やっぱり日本人は日本人だろうなと思ったりします。
このことは、逆に考えると千年前の日本人、千年前といえば時代は平安中期にあたりますが、やっぱり日本人は日本人の顔をしていて、いまの人も昔の人も、同じように恋をしたり、助け合ったり、友達と呑んだり、失恋したり、笑ったり、やっぱり同じ日本人なのだろうなあ、などと考えてしまうのです。


で、古典というと、ちょっとむつかしいというイメージをお持ちの方も多いようで、なにやら引き目カギ鼻の女性などが十二単を着て、古式ゆかしくおっとりと、なんだかおとぎ話の世界のようなイメージをお持ちの方も多いかと思います。
ところが、清少納言の「枕草子」を読むと、そこには、ひとことでいえばまるで「月に代わってぇ〜、おしおきよぉ〜!」のセーラームーンのような活発な女性が活き活きと描かれています。
「枕草子」というと、「春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山際(やまぎわ)、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきた・・・」という、出だしの一節を昔、学校で習ったのを覚えておいでの方も多いかと思います。
この文に続くのが、
「夏は夜。月の頃はさらなり、闇もなほ、螢(ほたる)飛びちがひたる。雨など降るも、をかし」で、実は、このあたりから、いかにも清少納言らしい、「をかし(=楽しい、おもしろい)」の世界が広がり出します。
つまり学校では、出だしの、ほんのご挨拶の、ちょいとばかり堅苦しいところだけを習っていて、そのあとに続く、まるで現代歌人の俵万智(たわらまち)の、「この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日〜♡」のような、いかにも女性らしい明るい「をかし」の世界が広がっている、つまり、これからおもしろくなるよ〜というところで、肝心の授業が終わってしまっているわけです。
清少納言は、27歳のときに関白の藤原道隆に依頼され、道隆の長女で一条天皇の中宮となっていた17歳の藤原定子(ふじわらていし)さまの教育係として宮中にはいっています。
要するに、才女だったわけで、数年前に仲間由紀恵主演で「絵島生島事件」を描いた「大奥」という映画がありましたが、まさにそこに出て来た仲間由紀恵演ずる絵島みたいな女性だったわけです。
宮中において、大奥の仲間由紀恵は、対立する大奥の女性陣を機転を利かしてやっつけますが、同様に清少納言も、当時は、漢学は男のものとされていて、漢詩は男にしかわかるまいとタカをくくる男たちを、その知識で次々とやりこめたりしています。
ところが清少納言を推挙してくれた、関白道隆が逝去すると、弟の藤原道長が関白となり、清少納言はスパイだなどとあらぬ中傷を受けて、宮中を追い出されてしまうわけです。
傷心の清少納言に、中宮の定子さまが「一日もはやく元気になって、また宮中にもどってきておいで」とばかり、紙を20枚贈ってくれます。
このときの様子が枕草子の第277段です。
読みやすく(やりすぎかも)、意訳してみます。
ちょっとセーラームーン風かも(笑)
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第277段「御前にて人々とも」
その後しばらくして、すっごいへこんじゃって、泣く泣く実家に帰ったわ。
そしたら、中宮様が20枚ばかり、紙を贈って下さったの。
届けてくださった使いの人は、すっごいおっかない顔をして、「早く参上せよ」なんて言ってたのだけど、そのあとに、まじめくさって、
「じゃが、この紙はあまり上等ではなさそうじゃ。延命を祈るお経も書けそうもないようだが・・・」なんて、言うものだから、思わず吹き出しちゃった。
ほんとうはね、そんなんじゃないの。
前にあたしが中宮様に、「気が滅入っているときは、紙を見ていると気もちが晴れます」って言ったのを、中宮さまがちゃんと覚えていて下さっのよね。
それで紙を贈ってくださったんだわ。
だから、ほんとは、紙の質がどうのこうのなんてどうでもいいことなの。
でもね、言った本人が忘れていたようなことまでちゃんと覚えていてもらえるのって、うれしいくない?
相手が普通の人でもうれしいのに、ましてその方が、中宮さまってなったら、そりゃー感動だわ。
でね、あたし、ドキドキしちゃって、中宮様に、
「紙(神)のおかげで、あたし、鶴みたいに千年も長生きしそうです!」って歌を書いたの。
で、使いの人に、「この歌を中宮様にお渡しになるとき、私が、あまりに大げさでございましょうが、と言っていたって申し上げてくださいね」ってお願いした。
そのあと、使いの人にに青い綾織りの単衣をあげたりして、大騒ぎしちゃった。
そしたら、なんだか気持ちが晴れてきちゃって。
あたしったら、さっきまでへこんでたはずなのに、もうはしゃいでる。
人の心って、おもしろいわね。
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このときの歌が、
 かけまくも
 かしこき かみの しるしには
 鶴のよはひと なりぬべきかな
とても上品で、格調高いですね。
ほかにも、面白いのが、たとえば第25段。
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憎らしいもの
お部屋にこっそり忍んで来る恋人を、犬が見つけて吠えるのって、すっごい憎ったらしくない?
あとね、ようやく密かに忍んで来てくれたのはうれしいんだけど、みんなが寝静まってお屋敷がシーンと静まり返っているのに、大いびきをかきながら寝ちゃうヤツ。
もぉ、絶対、まわりにバレバレじゃん><
それから、きっとバシッと決めようと思ってのことなのだろうけど、大袈裟な長い烏帽子(えぼし)をかぶって忍んできてさ、慌てているのか、烏帽子が何かに突き当たり大きな音を立てるヤツ。
なにそれ〜って思っちゃう。
あとね、簾(すだれ)をくぐるときに、不注意で頭をぶつけて、「イテテテ!」って、大声をあげるような男って、絶対、無神経!。
それからさ、夜、忍んでくるときに、戸を開けるなら、少し持ち上げれば音などしないのにさ、ヘタすれば軽い障子でさえガタガタ鳴らす男もいて、そーいうのって、なんかにくったらしいわ。
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第26段 胸がときめくもの
髪を洗ってね、きれいにお化粧して、お香をよくたき込んで染み込ませた着物を着たときって、心の中は晴れやかな気持がして素敵。
別に見てくれる人がいなくてもいいんだ^^
男を待っている夜は、雨音や風で戸が音を立てるだけでも、ハッと心がときめく。
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第27段 過ぎ去った昔が恋しいもの
もらった時に心に沁みた手紙を、雨の日などで何もすることがない日に探し出したとき。
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こうした、いかにも女性らしい感受性の豊かなエピソードが、323話もぎっしり詰まっていて、躍動感ある大人の女性の感受性が活き活きと描かれているわけです。
実に、ほがらかで、感性豊かで、明るく楽しい。
これが平安中期の、世界最古の女流随筆でもあるわけです。
上に、ねず流で口語訳したものを載せましたが、(雰囲気を出そうと、あえて女性風の文体にしたつもりなのですが、ちなみに私は決してネカマではありません)、ちょっと読んで、きっと「ああ、平安の世も、いまの時代も、人の心って変わらないんだなあ」ってお感じになっていただけたら、幸いです。
千年前も、千年後も、日本人は、いつも、いつまでも日本人です。
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『枕草子』第284段~香炉峰の雪(こうろほうのゆき)~

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