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Facebookの「一分で感動」から、感動のお話をひとつご紹介します。
タイトルは「息子のつなぎ姿」です。
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八丈島からの便で、搭乗したのは、YS11というプロペラ機でした。
その日は天候が悪く、機体もかなり揺れました。
思い返すとなんでこんな時に、と思うのですが、私は首にしていたペンダントを外し、汗を拭き取り始めました。
そのとたん、機体が大きく揺れ、手に握りしめていたペンダントを座席の間に落としてしまいました。
すぐに探したのですが、見当たりません。
その姿に気づいて、CAさんが
「何かお探しですか?」と声をかけてくれました。
「実はペンダントが落ちてしまって…」
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やまと新聞の動画コラム「ねずさんの動画マガジン」
http://www.yamatopress.com/co/pg146.html
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特徴を説明すると、隣の席の年配の方も、後ろの座席のダイビング帰りらしき真っ黒に日焼けした若者たちも、下を向いて探し始めてくださいました。
しかし、まったく見つかりません。
たった今、それも機内で落としたのですから、なくなるはずないのに…。
焦る私に、CAさんが、
「ご心配だと思いますが、到着してから必ずお探しいたしますのでご安心ください」
と力強い言葉をかけてくださいました。
ずっと探し続けてくださった周りの方にもお礼を言って、不安ながらも羽田到着を待つことにしました。
着陸後、全乗客が降りるなり、連絡をしてくださっていたのでしょう。
整備士の方々が乗り込んで来ました。
再度、どんな風になくしてしまったかを説明すると、座席近くを丹念に探してくださいました。
ところが、やはり出てきません。
「動かすしかないな」
リーダーと思われる人のそのひと声で、座席の分解が始まりました。
座席を外すことがどんなに大変なことか、十分理解していました。
それでも、私には、「もう、いいです」のひと言が、どうしても言えませんでした。
ネジを外し終え、座席シートを外したとたん、ペンダントが見つかりました。
「どうしてこんなところに」と思うくらい狭い座席と座席の間でした。
「ありがとうごあいます。ご迷惑をおかけしました」
そう言いたかったのですが、受け取ったとたん、涙がぼろぼろ溢れ出てきてしまい、言葉になりません。
「実は昨年の春、息子が八丈島に旅行中、友達の運転する車の助手席に乗っていて、交通事故に遭って死んでしまったのです。
就職も決まった、卒業旅行でのことでした。
一年経ちましたが、息子の死が受け入れられないままでいます。
このペンダントは、息子の形見で、だからどうしても探し出したくて…。
皆さんには大変ご迷惑をおかけしてしまいましたが、もしかしたら、息子が私に何か伝えたくて、こんなことをしたのかもしれません。
皆さんが作業をされている姿を見ているうちに、なんだかそんな気がしました。
息子は私と同じように技術職でした。
車の会社ですが、あのまま生きていたら、きっと、皆さんのようにつなぎを着て活躍していたことでしょう。
私が息子のつなぎ姿を見るのを、とても楽しみにしていたのに気づいて、皆さんのつなぎ姿をみせようと、今日、引き合わせてくれたのかもしれません」
「そうでしたか」
いつの間にか、整備士さんとCAさんだけでなく、機長さん、副操縦士さんまでが私の傍に来て、心配そうに取り囲んでくれていました。
CAさんの何人かは涙くんでいます。
「元気になってください。息子さんもそう願っているはずです」
同年代であろう機長さんが声をかけてくださいました。
「また、ぜひご搭乗ください。一生懸命整備して、お待ちしていますから」
目を見て力強く言ってくれた先ほどの若い整備士さんに息子の顔が重なって…。
《三枝理枝子著「空の上で本当にあった心温まる物語2」あさ出版 2011年10月17日発行より》
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こういうやさしさがあるのが、日本なのだと、思います。
子を思う親の心、親に立派に成長して作業衣を着た姿を見せたいと願う子の心。
たったひとりの乗客のために、みんなで力を合わせて座席まで外してペンダントを探してくれるパイロットやCA、整備員のみなさんの心。
そういうやさしさと思いやりの心の集まった国、それが古くからある日本の姿なのだと、思います。
そして作業服を着て、汗とあぶらにまみれて働くことを美しい姿と思うのが、これまた古くからの日本の姿でもあります。
特攻隊として散華されたかつての青年たちも、南方の島々やジャングル、あるいは満蒙の地で戦い、散華された英霊の皆様も、その心は同じです。
思いやりの心です。
内地に残した家族や親戚や兄弟や仲間たちを大切にしたいという思いやりがあったからこそ、命を捨ててでも、国を守ろうとしたし、勇敢に戦ったし、上官が死んでも、体に動けないほどの銃創を受けても、傷口に蛆(うじ)がわいても、それでも戦った。
中山恭子先生がよくおっしゃるお話なのですが、先生は、「だます人」と「だまされる人」がいたときに、「だます方が悪い」と考えるのが日本人の特徴だとおっしゃいます。
ところが世界の多くの国は違う。
「だまされる方が悪い」と考える。
つまり、だました者勝ちというのが世界の常識だと、こうおっしゃいます。
「だます方が悪い」と考えるのは、思いやりの心があるからです。
「だまされる方が悪い」と考えるのが、自分勝手を正当化したいという邪心があるからです。
そうそう。冒頭に出て来るYS-11は、大戦後に初めて日本のメーカーが開発したプロペラ式の旅客機です。
この飛行機、零戦を作ったことで有名な堀越二郎技師らが中心となって造られた、唯一の国産旅客機です。
私も何度が利用させていただきました。
室内は、まるでバスの中みたいな感じで、こじんまりとした飛行機です。
けれどこのYS-11、乗客の安全をすごく考えている旅客機なのです。
飛行中に空の上でエンジンが停止してしまう。
万一、そんな事態になっても、ちゃんと飛行できる性能を備えていたのです。
たいせつなお客様を運ぶ飛行機だから、どこまでも安全を第一にする。
そんな設計を実現するのも、思いやりの心を大切にする、いかにも日本らしい設計思想です。
世界最高のドッグ・ファイター「ゼロ戦」を作った日本は、同時に世界最高の安全性能を持った旅客機を作った国でもあったのです。
そしてその飛行機に乗るパイロットもCAも、乗客も、整備士たちも、たったひとりの乗客の落とし物をみんなで親身になって探そうとする、心優しい人たちでした。
日本を取り戻すということは、私は「世界の良心を取り戻すことにつながる道」だと信じています。

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