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掃除の天使たち-1

日心会メルマガの11月23日号で配信した記事を転載します。
たいへん感動的なお話です。
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今回は、大きな駅で到着した折り返し運用の列車を、限られた時間内で掃除/清掃をする人々の話です。
名付けて、
 おばちゃん軍団
 <天使の掃除人>
国鉄時代、ターミナル駅と呼ばれる比較的大きな駅では、優等列車の発着が頻繁に行なわれていました。
関東でいえば、北の玄関口の上野駅、中央アルプス/房州方面の新宿駅、房州方面への両国駅、そして日本の玄関口の東京駅。
昼夜を問わずに発着する列車数は膨大な本数になります。
乗客が多くなればなるだけ、列車内は、乗客の残したゴミなどで汚れていきます。
終着駅に到着した列車が折り返し運用になる場合は、この汚れやゴミを取り除き、新たなる乗客に気持ちよく乗車してもらわなくてはなりません。


一昔前では、とくに、長距離で運用された列車の座席の下には膨大なゴミが置き去りにされていました。
駅弁の空箱、ミカンの皮、お茶の容器、ジュース/ビール/酒の空き缶や空き瓶、菓子/せんべいの空き袋、新聞/週刊誌などなど。
灰皿には、無数の吸い殻やチューイングガム。
トイレは言わずもがな~~~。
折り返し運用がなく、一旦車両基地と呼ばれる車庫に戻れるのならば、そこで洗車/洗浄、室内の掃除/清掃/整理/整頓/補修などを時間をかけて出来るのです。
しかし、終着駅で列車が折り返し運用に回されると、まともに車内整備の時間がとれません。
昭和初期から中期の国鉄時代では、モンペ姿で頭にホッカムリをしたおばちゃんたち(おじちゃんもいました)が、竹で編んだ行李のようなゴミ入れを引きづりながら、車両の中にいそいそと駆け込んで、車内をきれいにしてくれていました。
彼らの、働く姿を見かけたことがあると思います。
行楽シーズンともなると臨時列車が増発し、車内掃除/清掃は、戦場と化してしまう忙しさとなります。 
赤帽が姿を消してから久しいですが、在来線の長距離列車が少なくなった現在でも、このおばちゃんたちは活躍しているのです。
東京駅では、頻繁に到着/発着する新幹線に、おばちゃん達を見ることができます。
乗客が残したゴミを片付け、汚れた窓やテーブルをふき、トイレをピッカピッカにし、床の汚れを拭き取り、座席の頭カバーを取り替え、座席の向きを直し、乗客の忘れ物を保管し、これらの仕事を7~8分で終わらすのです。
例えば、上り列車が東京駅に着くとします。
乗客をおろし、車内掃除/清掃、再び乗客を入れるまでの時間というのは、折り返しの発車まで12分しかありません。
乗客の乗降時間が約5分。
つまり、残り7分しか掃除/清掃に残っていないのです。 
日本の鉄道の運行時間は、秒単位で正確です。遅れは出せないのです。
「おばちゃん軍団」の仕事も正確で、時間内に見事に応えてくれています。
汚れたトイレを掃除するのは誰でも嫌なはずです。
新幹線のトイレはとても汚れていることが多いのです。
朝7時~8時台はまだきれいなのですが、時間が過ぎるにつけ用足しする人々がグ~~~ンと増えるのです。
使用客が増えただけ汚れのグ~~ンではなく、プ~~~ンと臭ってくるのです。
特に、遅番の人は大変です。
『どうしたらそんなに汚せるのか』と、不思議に思う毎日です。
汚物があふれかえっている日、詰まっている日、男性用小用に大便が詰まっている日、トイレットペーパー以外のものを流されて起こる便器の詰りはしょっちゅうなのです。
『ビニール袋を二重にして手を入れて引っ掻き回せばたいていなんとかなる』と日夜格闘しくれているのです。
多少自分の手が汚れることがあっても、便器がピカピカになればそれでいい。
熟練した人は、台座迄外してきれいにしてしまいます。
おそらく、トイレの神様がおられるのでしょう。
トイレがどんなに汚れていたとしても「おばちゃん軍団」は、綺麗にしてしまうのです。
団体客が多い時は、酔いつぶれた客を運び出すこともあります。
勿論、車内は通常の汚れではありません。
列車ダイヤが乱れ、掃除/清掃の時間が不十分な時もあります。
そんな時も、機転を利かせた人員配置で見事に時間内に仕事を終わらせしまうのです。
チームワークと士気が高いからこそ可能なのです~~~と言ってしまうのは簡単です。
一日に20本以上の列車の掃除/清掃を行ない、中腰になって掃除する時間も多く、列車内が掃除/清掃がしやすい材質/環境になっていても、労働力は半端ではありません。
掃除/清掃の仕事は、列車内だけに限りません。
乗降客のいる混雑する中で、ホームの掃除も行なうのです。
さらに、慣れない乗降客の案内やら安全確保の仕事迄、行なってくれているのです。
まずは、この動画をご覧下さい。
現在では、モンペにほっかむり姿が、一例ですが、ピンク色の制服に替わっています。 


「おばちゃん軍団(勿論、若い女性もおります)」は、列車が到着する3分前にホーム際に整列します。
新幹線がホームに入ってくると深々とお辞儀をして迎え、掃除/清掃を終えたチームは再度整列し、ホームで乗車待ちの客に『お待たせしました』と一礼するのです。
この礼儀正しさと華麗な神業的な仕事をして「7分間の新幹線劇場」とも言われています。
海外からの旅行客は、新幹線運用の正確さ/安全性/清潔さ/速度を撮影して、youtubeに投稿しています。
勿論、「おばちゃん軍団」の働きぶりも、驚きをもって紹介されています。
フランスの国鉄総裁に『これをフランスに輸出してほしい』と言わしめた、日本が誇る「おばちゃん軍団」なのです。
前米国カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏や、米国運輸長官ラフード氏も、日本を訪れた際にわざわざ「おばちゃん軍団」を視察しています。
諸外国では、掃除担当者は低層の仕事だと見られており、それが故か働きぶりも士気もよろしくありません。
「おばちゃん軍団」の働きぶりは、まず考えられないからです。
この「おばちゃん軍団」とは、JR東日本グループ会社の鉄道整備株式会社、通称「テッセイ」の社員たちです。
業務は、停車している新幹線や駅構内を掃除することなのです。
一見、地味な肩書きに聞こえますが、世界最速と言われる「魅せる清掃」で世界中から注目を集めています。
原則として1人が、1両を担当します。
列車の車両数にもよりますが、チームは22人編成で、チームのトップが統括主事の下に補佐役の主任2人とベテラン2人がいて、その下に実働部隊がいます。
手が時間が足りない時には、主事も主任も掃除/清掃に加勢します。
この掃除のチームのメンバーの特徴は、おばちゃんが多いがゆえに、「おばちゃん軍団」と呼ばれるようになりました。
リーダーもおばちゃんが多く、気付いたことはドンドン改良点を探し現場に反影させていきます。
このチームがうまく機能しているのは、リーダーのおばちゃんの気遣いがあるからだけでなく、チーム内の多様な人材を使って完璧に仕事をこなし続けることができるマネージメントがそこにあります。
勿論、最初から凄い働きぶりであったわけではありません。
従業員は、3K職業と云われる、
 きつい (Kitsui)
 汚い(Kitanai)
 危険(Kiken)
のオンパレードの、清掃業と云うだけで見下されることもあり、胸を張って働いていたとは少なかったはずです。
仕事中に周囲から浴びせられる視線。
それに、耐えきれず、また労働に耐えきれずに辞めて行った人も沢山います。
JR東日本内でも決して評判がよくなかったという「普通」の清掃会社だったのですが、「清掃の会社」から「おもてなしの会社」へと変わっていったのです。
沢山のエピソードがあります。
JR社員から、『お客がゴミ箱にお金の入った封筒を捨ててしまったので探して欲しい』との連絡。
おばちゃん達は必死でゴミ箱を探したのですが、見つかりません。
ホーム下のゴミ集積場のゴミ袋を広げて探したのです。
長い格闘のすえに見つけ出し、お客に届けられたのです。
「たかが『掃除』されど『掃除』。
自分たちがお客様の『おもてなし』をするんだという意識の変化が序所に芽生えたのです。
最強の現場力・チームワークを生み出したこれらテッセイの数々のエピソードを通じて、彼らが誇りを持って仕事をしていることがよく解ります。
掃除をすると云うことは、「場」を清めると云うことにつながっているのかもしれません。
参考資料
【【HD駅撮】2012年夏東北・上越新幹線東京駅の車内清掃員スタイル】

おばちゃんだけでなく、おじちゃんもいました。
http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51766067.html
日経ビジネス 2011 . 3.7 月号
「新幹線・お掃除の天使たち」遠藤 功(あさ出版)
http://gemba-sembonknock.com/2011/08/22/0900.html
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