
だいぶ秋も深まってきました。
この時期になると、道路脇や空き地などに、ススキの穂がたなびくようになります。
ススキとお月様。
なんだかとても日本的風景です。
ススキは古来から日本にある、日本の古生種で、日本人とススキは昔からとっても仲良しでした。
昔は、ススキの穂は家畜用の飼料に、また、ススキの茎は、とっても丈夫なので屋根に用いられました。
これが茅葺(かやぶき)屋根で、弥生時代の遺跡、たとえば登呂遺跡などにある竪穴式住居で用いられていた屋根が、まさにススキでできた茅葺き屋根です。

茅葺(かやぶき)屋根は、ススキの茎を冬場に収穫し、春まで十分乾燥させてから、屋根として葺(ふ)きます。
なぜ冬に収穫するかというと、茎に水分が多い状態で屋根に使うとすぐに腐ってしまうからです。
ですから、冬になってススキが枯れてから収穫し、春まで乾かして用いたのです。
この屋根の葺き替え作業は、ものすごくたくさんのススキを使うし、たいへんな作業なので、これは村の大人達の共同作業です。
そしてススキを収穫するために、全国どこの村でも、ススキを繁殖させている、いわばススキ畑のようなところを持っていました。
これが「茅場(かやば=萱場)」です。
実におもしろいことなのだけれど、ススキでできた茅葺(かやぶき)屋根というのは、家の中のカマドや囲炉裏(いろり)の煙で燻(いぶ)されると、耐久性が高まり、しかも虫がつきにくくなる。
まさに生活の知恵です。
そんなことがいまから少なくとも5000年くらい前から、日本で一般的に行われていたというのは、なんだかとてもワクワクします。
ススキは、漢字で書くと「芒(すすき)」、「薄(すすき)」です。
別名が、「茅(かや)」や「尾花(おばな)」です。
もともと、ススキはイネ科の植物で、いまでも東京の雑司ヶ谷の鬼子母神では、ススキの穂で編んだミミズク細工が民芸品として売られています。
そのススキは、株が大きくなるのに、けっこう時間がかかる植物です。
そして、しっかりとした根(株)ができると、たくさんのススキが集まって、群生します。
さらに面白いのが、実は、植物の中で、ススキは植物生育の最後に繁殖するという性質を持つということです。
たとえば、空き地があるとします。
最初の年は、ただの空き地です。
翌年になると、そこに背の低い草花が繁殖を始めます。
そして何年が経つと、空き地が草でぼうぼうになる。
その空き地が、背丈の高い草で、草ぼうぼう状態になった頃、空き地の一角に、ススキが繁殖を始めます。
そして、それから数年経つと、その空き地は、ススキでいっぱいになる。
ススキは根が深く、群生するので、何年か経つと、地面が湿気を多く持つようになり、地味が肥えてきます。
空き地は全国にいっぱいあるけれど、なかなかそこに樹木は生えてくれません。
けれど、ススキが群生を始めて何年が経ち、地味が肥えてくると、そこに今度はアカマツなどの樹木が生えてくるようになります。
つまり、ススキは、植物生育の最終段階で群生し、地味を肥やして、次の世代の樹木を育ててくれるという性質を持っている、というわけです。
こうして、原野は草原となり、やがて森になって行く。
森ができると、そこには動物達も住めるようになるのです。
ちなみに東京証券取引所は、東京都中央区茅場町にありますが、茅場町という名が示す通り、そこは昔は、ススキ畑=茅場(かやば)だったところです。
明治時代、東京に証券取引所を開設しようと考えた明治の元勲たちは、ススキ畑だった「茅場」こそ、人々が群生し、将来日本の大樹を育ててくれる場所として、まさに「茅場町」を証券取引所の設置場所に選んだ。
なんだか、とってもすごいです。
さて、秋の風物詩で、かつ日本の古生種であるススキですが、一時は、絶滅の危機に至ったことがあります。それも実は、この何十年かの、最近のことです。
もっと言えば、戦後のことです。
セイタカワダチソウに、やらたのです。

セイタカアワダチソウは、あっちこっちに、黄色くドクドクしい花をこの時期咲かせて繁殖しているので、ご覧になった方も多いかと思います。
高さは1~2.5メートルほどで、よく肥えた土地だと4メートル近い背丈になることもあります。
このセイタカアワダチソウは、日本に昔からあったわけではなく、もともと北アメリカ原産で、戦後、米軍が持ちこんだ輸入物資にまぎれて日本に渡来しました。
おかげで秋になると、ススキやコスモスが生い茂っていた空き地は、一時期、このセイタカアワダチソウに完全にやられ、窓から見えたコスモスも、可憐な彼岸花も、ぜんぶいなくなって、野原はセイタカアワダチソウの毒々しい黄色の密生だけが目立つようになってしまいました。
要するに外来種のセイタカアワダチソウは、日本古来の秋の植物を全部駆逐し、まるでそこが自分たちだけの住む世界のように変えてしまったのです。
とにかくこのセイタカアワダチソウというのは、とっても悪い奴で、密生して大繁殖するだけでなく、地下50センチくらいまで深々と丈夫な根を張り、そこからなんと、毒素まで吐き出す。
この毒素は他の植物を枯らし、それだけでなく、土の中にいるモグラやミミズなど、土地を豊かにしてくれる動物や昆虫たちまでも殺してしまうのです。
おかげでセイタカアワダチソウが繁殖したところでは、日本古来の草花だけでなく、モグラやミミズまでいなくなってしまった。
さらにセイタカアワダチソウは、先端に付けた密集した黄色い花から、大量の種子を四方八方に飛ばします。
季節がかわって、ようやくセイタカアワダチソウの地上部分が枯れたと思っても、奴らは、地下の根茎から新らしい芽を湯水のように出しながら越冬し、翌年になると、その地下茎の芽から続々と発芽し、空き地を我が物顔に占拠するし、飛んで行った種子は、近隣に繁殖の輪を広げる。
要するにこのセイタカアワダチソウという在日外来種は、郷に入って郷に従おうとか、他の草花との共生を図ろうなどという意思が、カケラもなく、他人からどう思われようが関係なしに、自分たちだけの繁殖と繁栄に精を出して密生するだけでなく、毒素までバラまくのです。
まるで自己中と図々しさと我がままな、どこかの国の在日渡来人か、イナゴの大軍のようです。
おかげで一時期は、関東以西から九州にては、秋ともなれば、すっかりセイタカアワダチソウに野原を占拠されてしまった。
秋の七草なんて中間色系のやさしい風情はどこへやら、日本全国、空き地という空き地がセイタカアワダチソウが繁殖し、あの毒々しい黄色い花を咲かせまくっていたのです。
そしてほんとうに一時期は、もはや日本の野原は、完全にセイタカアワダチソウに占領されてしまったかに見えるくらいまでになった。
セイタカアワダチソウは、自分だけが群生し、密生し、地下に毒素を撒き散らして他の植物を追いやります。
そして、自分たちが密生するだけで、花も幹も根も、人々の生活には何の役にも立たない。
そこに前から住んでいた、小動物や昆虫類まで殺してしまう。
要するに、彼らは、他の動植物すべてに対して、敵対的なのです。
日本的「共生」や「和」の精神なんてカケラもない。
実際、セイタカアワダチソウの繁殖のおかげで、空き地に咲いていた秋の風物詩、コスモス(秋桜)や、萩(はぎ)の花、桔梗(ききょう)や、撫子(なでしこ)、葛(くず)、藤袴(ふじばかま)、女郎花(おみなえし)なんで、一昔前までは、秋になれば野山でどこでも見れた雑草だったのだけれど、ほんとにこの何年かは、人工的に繁殖させているところ以外は、まるで見かけなくなってしまいました。

ところが、です。
このセイタカアワダチソウの圧倒的な侵略に対して、「許さないぞ!」と立ち上がった日本の古生種の植物があります。
ススキです。
在日渡来種のセイタカアワダチソウは、まさに我が物顔に日本の野山を占領しました。
そして自分たちだけの繁栄のために、地面の栄養成分を吸い尽くします。
それだけなく、地中は、彼らの出した毒素で充満してしまう。
おかげで、彼らセイタカアワダチソウは、あちこちで自滅をはじめてしてしまったのです。
このとき、それまでじっと耐えていた日本古来のススキが、野原でふたたび勢いを取り戻し始めます。
ススキは、セイタカアワダリソウが枯らした土地にふたたび栄養素を与え、毒素を消化し分解します。
ススキの繁殖のおかげで、土地はふたたび栄養を取り戻す。
そしてススキの群生によって、野原にモグラやミミズも、戻って来た。
スズムシなどの秋の昆虫も帰って来た。
そして、少しずつではあるけれど、あの可憐なおみなえしや、なでしこ、コスモスなども帰って来たのです。
一時は、自己中で排他的なセイタカアワダチソウに奪われたかに見えた空き地が、いまふたたびススキやなでしこなどが共生する、もとの野山に戻りつつあります。
ここまで来るのに、何年もかかった。
その何年もの間、ススキは、じっと耐えながら、自分を鍛え、時節の到来を待ち続けたのです。
いまもまだ、排他的なセイタカアワダチソウの群生は、そこここでみられます。
けれども、彼らは、排他的であるがゆえに、一時的には興隆を誇っても、結局は自滅していきます。
そしてもとからある日本の草花が、友を呼び、様々な美しい花を野原に咲かせてくれる。
日本の古来種が、いま、ふたたび野山にもどりつつある。
なんか、いまの日本をみているようです。
いまこれをお読みのあなたが、もし、セイタカアワダチソウの群生する中に、ほんの少々のススキを見かけたら、遠くからでもいい、ぜひ心の中で、「がんばれよ」と声をかけてあげてください。
ススキは、私たち日本人の仲間なのですから。
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