
「動物農場(どうぶつのうじょう)」という本があります。
かつて一世を風靡し、世界的なベストセラーになった本です。
原題は、「Animal Farm」です。
いつごろの本かというと、昭和20(1945)年8月17日の刊行です。
作者はジョージ・オーウェル(George Orwell)といって、英国の人です。
「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」、「史上最高の文学100」のタイトル保持者でもあります。
小説「動物農場」は、飲んだくれの農場主を追い出して理想的な共和国を築こうとした動物たちを描いた物語です。
ある日、動物たちは、人間の農場主によって動物たちの利益が「搾取」されていると気付くのです。
で、その動物たちが、偶発的に起こった革命で人間を追い出し、「豚」の指導のもとで「動物主義」に基づく「動物農場」をつくりあげる。
ところが、動物たちの間で不和や争いが絶えず、指導者の豚は、独裁者となって恐怖政治を行う。
結局、動物たちにとっては、支配者が入れ替わっただけで、人間が支配していた時以上に苦しく抑圧された過酷な生活が待っていた、というお話です。
この物語には、個人の名前を特定する固有名詞ひとつも出てきませんが、登場する動物達は、全員、旧ソ連のスターリンであったり、その周辺にいた人物であったりと、読む人にはその人物特定が容易にできるよう工夫されています。
要するに内容は、動物に例えているけれど、実際にはソビエト共産党に対する痛烈な批判本です。
おもしろいことに、オーウェルがこの本を書きあげた昭和19(1944)年2月当時は、まだ米英とソ連が連合国としての同盟国だったせいで、彼は、数社の出版社から出版を断られています。
彼は、半年がかりで、あちこちの出版社にこの本を持ち歩き、ようやくこの年の8月になって、セッカー・アンド・ウォーバーグ社に出版を承諾してもらっています。
ところが、昭和19年当時といえば、まだイギリスはドイツとの激戦を演じていた頃です。
国内は紙不足で、出版しようにも紙がない。
結局、本が出版されたのは、ようやく第二次世界大戦が終わった昭和20年8月のこととなりました。
ちなみにナチス・ドイツがソ連に攻め込んだのは、昭和16(1941)年6月22日のことです。
開戦当初は、ドイツの軍事力の前に、ソ連は連戦連敗です。
ソ連は全土をドイツ軍に蹂躙され、ついに首都モスクワも陥落寸前となるけれど、冬の到来で、かろうじて戦線が膠着化した。
歴史の教科書では、この後、昭和17年6月からはじまるスターリングラードの戦いで、ソ連がナチス・ドイツに圧勝し、これを転機にドイツ軍が潰走を重ねたと書いているけれど、ここには、重要な事実がひとつ書かれていません。
それがなにかというと、実は、ドイツ軍に押され、国家が壊滅の危機に陥ったソ連のスターリンが、米国に泣きついて115億ドル(当時のお金で約4兆1000億円)という途方もない巨額の戦費を借りた、という事実です。
当時の日本の国家予算は、8000億円くらいです。
いまの貨幣価値に換算したら、約50倍になる。
つまり、当時の4兆円というのは、いまのお金で200兆円という額になります。
要するにソ連は、いまの相場で言ったら、200兆円という巨額の戦費を米国から借り、このカネで、軍装を整え、ドイツ軍に対峙した。
ついでに軍事兵器の技術も米国は当時のソ連に供与しています。
米国にしてみれば、ヨーロッパ戦線におけるドイツ軍が、ソ連を傘下に収めることは、自分たちが戦争に負けることを意味したから、これだけの援助は止むをえないことでもあったでしょう。
ただし、カネは、あくまで軍事借款です。
貸したのであって、あげたのではない。
ところが、第二次世界大戦が終わると、ソ連のスターリンは、それまでの親米路線を一転させ、露骨に米国に敵意をむき出しにします。
で、結局、このカネを踏み倒したまま、戦後46年経った平成3(1991)年に、ソ連は崩壊した。
米国の貸した金は、全部、パアです。
要するに米国も、英国も、スターリンに体よく騙されたのです。
カネがあって、武装が完璧で、戦意もあれば、ふつう常識で考えてもソ連とドイツの戦いは、ソ連の勝利となります。
結局ナチス・ドイツは、昭和20(1945)年4月30日に、ベルリンでヒットラー総統が自殺。
5月2日にはソ連がベルリンを占領し、同月、ドイツは降伏した。
ドイツを破ったあとも、そのために調達した戦費も軍装も、まるごと手元に残っていたソ連は、ヨーロッパ戦線にいた軍を、反転させて満洲や樺太に向かわせ、そこで日ソ不可侵条約を一方的に破棄して日本に攻め込んだわけです。
戦いは、どちらかといえば、日本軍優勢だったとも言われています。
しかし、日本は、ポツタム宣言を受け入れて、連合国に降伏する。
日本軍を武装解除させたソ連は、満洲国を建国した日本の技術者や労働者らを、施設や重機ごと、シベリアに連行し、給料も払わず、タダ働きで使役して、国土のインフラの整備をします。
だいたい、日本のいまの自衛隊の国家予算が、人件費こみで約4兆円です。
それを200兆円もGETしたのです。
当時のソ連にはカネはあった。
そして労働力は、日本人抑留者やドイツ軍抑留者を使役した。
ソ連は、人々が働かなくても、○か年計画で、国内インフラが次々と整う理想社会だなどと、当時の日本の左翼などがさんざん持ち上げていたけれど、裏を返せば、他所の国から借りた金も返さずに、別の国から徴収した労働力と技術力を使い、一部の高級幹部だけが贅沢な暮らしを営んでいたという、それだけの話です。
ひらたくいえば、ただの泥棒国家でしかない。
理想社会が聞いてあきれます。
ちなみに、ロシア帝国が滅んで、ソ連が誕生したことで、行き場を失った(国にいたらブルジョアとして殺されます)旧帝政ロシアの旧貴族たちは、こぞって五族協和を目指した満洲国に流入しています。
おかげで、旧満鉄の職員には、美しい帝政ロシア貴族の娘たちが数多く採用されていた。
満洲がソ連に蹂躙されたとき、その旧貴族の一家や娘たちがどのような運命をたどったのか、歴史家たちは、誰もそのことに言及しようとしていません。
おそらくは、聞くもおぞましい出来事があったろうと思う。
要するに、ソ連という国は、理想化の共産主義者たちが、権力主義の殺人鬼たちにいいように利用され、収奪されただけの国家でしかない。
そしてそのことは、中国共産党や、北朝鮮、ルーマニア等においても、まったく同じだったということです。
こういう事実こそ、学校は生徒たちに教えなければならないと思うのだけれど、どういうわけか、日本の教育界は、いまだにソ連はいい国だと思っているらしい。
その点、借金を踏み倒された米英は、第二次世界大戦後、すかさずソ連の横暴に気付き、徹底したレッドパージ(共産主義者狩り)を行っています。
ちなみに、ネットで「レッドパージ」で検索すると、それが日本でマッカーサーが行った「国民の基本的人権を明確にうたった憲法をふみにじった無法な弾圧」などと、いい加減なことが書いてある。
馬鹿なことを言ってはいけません。
赤狩りが日本で起こったのは、米英が共産主義者を明確に「敵」だと見極めた時点より何年もあとのことだし、すくなくとも日本では、後期GHQが、日本人共産主義者にいったん与えた公職から追放しただけの話でしかない。
すくなくとも、共産主義者たちは、命に別条はなかったし、いまも平然と活動を続けています。
これに対し、米英では、共産主義者たちは徹底して探し出し、逮捕拘留して施設に放り込んだ。獄死者も数多く出しています。
あたりまえです。
自国を否定し、権力亡者の殺人鬼に国家国民を委ねるようなゴロツキに、自国で保護を与え、のうのうと暮らしてもらう必要などどこにもない。
冒頭に紹介したオーウェルの「動物農場」は、こうした背景から、昭和20年には爆発的なベストセラーになり、さらには、昭和21年には、全米でも発売されています。
それだけではない。
米国政府は、昭和26年には、「動物農場」を30ヶ国語以上の言語に翻訳し、これを世界に配布するための資金援助を行い、さらには、この年、「動物劇場」のアニメ映画の製作にまで出資しいます。
アニメ版の「動物劇場」は、いまではDVDにもなっていて、たまにレンタルビデオ屋さんで、見かけることもあります。
ご興味ある方は、是非、ごらんあれ。
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