
民主党など野党3党が提出した緊急雇用関連4法案が、19日午前の参院本会議で民主、社民、国民新の野党などの賛成多数で可決しました。
自民、公明両党は、同法案の内容は政府が年明けの通常国会に提出する平成20年度第2次補正予算案で対応できるとして反発し、法案採決を棄権。
自民党の村田吉隆国対筆頭副委員長は19日の記者会見で、雇用関係4法案について「審議に値しない」と述べ、衆院では次期通常国会へ継続審議扱いとせず、廃案とする意向を示したとのことです。
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さて、ここでいう民主党の出した緊急雇用対策関連4法案とはどのようなものなのでしょうか。
法案は、
(1) 採用内定取消規制法案
(2) 派遣労働者等解雇防止緊急措置法案
(3) 就業支援のための住まいと仕事の確保法案
(4) 有期労働契約遵守法案
の4つからなりたっています。
景気後退で雇用不安や住宅不安が重なる世相の中で、一見、タイムリーに出された庶民のための法案というように見受けられますが、実際のところはどうなのか見てみました。
まず、採用内定取消規制法案ですが、雇う側の企業にしても、本来ならちゃんと採用してあげたい。それが日に日に深刻化する景気後退でどうにもならないから、迷惑のかからないように「内定」の段階で採用を取り消している。無理に採用して会社が倒産してしまったら、それこそ大問題です。
もし新法によって「内定」=決定となるというなら、企業としては、あえて「内定」という言葉は使わず、「事前仮押さえ」とか名称を変えるだけのことであり、これでははじめから“ザル法”です。立法化する意味がない。
民主党は年内成立すれば1月から施行と言っているけれど、そうなると企業側としては、現在「内定」している学生に対し、本採用の見通しをさらに厳しくし、多くの内定者に対して逆に「採用取消」をすることになる。
緊急雇用対策といいながら、実効は、逆に内定者の大量取消という問題を引き起こしてしまう。
次に派遣労働者等解雇防止緊急措置法案ですが、これは、雇用保険に加入してい
ない派遣労働者でも、2か月以上の勤務実績があれば雇用調整助成金の対象にするというもの。雇用調整助成金というのは、事業主に休業手当等の2分の1~5分の4を助成するというもので、要するに派遣社員をクビにしたら事業主側にカネがはいる。これなら眼先の資金繰りに困った中小企業などは、逆に競って派遣を切りにかかるのではないか?
これについては既に政府・与党が、被保険者期間が6カ月未満の場合も助成金の対象とする法案を出している。違いといえば、雇用保険に加入している派遣労働者を含むか含まないかの違いだが、基本的に「雇用保険に加入していなくても支給対象にする」という民主安は、歳末の時限立法としてなら理解もできるけれど、これが永続する法案となるなら、誰も雇用保険に加入などしなくなる。なぜなら保険に加入しなくても保険金がもらえるからである。
住まいと仕事の確保法案もわけがわからない。住居を失った失業者等に住宅貸与と生活支援金月10万円を提供するというのだが、公布1カ月後の施行となっており、年末年始の一番大事な時期に対応していない。
すでに政府がハローワークでの専門相談窓口を15日に開設し、3日間で雇用促進住宅への入居決定が382件に上っているというが、屋上屋を架すような法案にどのような意味があるのかわからない。
有期労働契約遵守法案は、派遣社員を期間限定で雇い入れるたとき、中途での契約解除を制限したり、労働条件等に際して正社員との間に差別を設けてはならないとするものというが、こうなると採用する企業側としては、期間限定で、打ちきりも自由だから時給の高い派遣を雇っているわけで、それができないのなら、時給の安いパートを雇い入れる。つまり、企業側としては派遣を雇い入れる意味がまるでなくなる。
ということは、派遣業という業種自体が壊滅に追いやられるし、いま派遣で就業中の人たちも、職を奪われることになる。これはやばい法案かもしれない。
なんだか、マスコミの報道をみると、緊急経済対策の一環としての民主党・社会民主党・国民新党提出「緊急雇用対策関連4法案」に与党が賛成しなかったことが、さながら犯罪者扱いのような報道ぶりで、しかもこの4法案の中身がさっぱり報道されない。
そこで、簡単に調べてみた結果が以上のとおりです。
(比較にあたっては、北海道6区の民主党衆議院議員佐々木隆博氏のブログから、緊急雇用対策関連法案比較表を参考にもちいらせていただきました。)
この4法案は、野党の多い参院で本日19日可決しましたが、可決後衆院に送られるので、100%廃案になります。
100%廃案になることがわかっていて、マスコミにおもねり、万一成立したらたいへんな社会的混乱を招きかねない法案や、まったくのザル法案をお題目として掲げる。
もし民主党が、与党の一次補正すら審議拒否し、景気対策を大幅に遅らせ、返す刀で「通らない」ことがわかっている法案で、世間をたぶらかそうとしているなら、これは日本国民に対する犯罪です。
なにも与党案が全面的に正しいとはいいませんが、景気対策の補正予算審議の足をひっぱる一方で、国籍法の改正など、明らかに国民に不利益の出る法案には、積極的に賛成。
実行に疑問のあるいんちき法案を持ち出してきて審議をかく乱し、政府の景気対策を遅らせる。こうした政治手法が、ほんとうに国民のためになっているのかについては、おおいに疑問を感じます。
民主党には、責任政党として次代を担う政権を目指すなら、もうすこし真摯に政治に取り組んでもらいたいと、切に思います。
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